水族館デート
時計台の時計は午前11時を指していた。
明らかに早く着きすぎた。
全くどんだけテンション上がってんのよ私。
私はそんな自分に少しうんざりしながら
彼を待った。
どこかに行っても良かったが、正直行くところもなかったし、何よりドキドキしていてそれどころではなかった。
私は時計台に体を預けて、誰からの連絡も入ってこないスマホを眺める。
今日こそは、彼と仲良くなろう。
そしてあわよくば、LINEも交換したい。
なんてやけに甘い妄想をしてると、いつの間にか12時になっていた。
「おはよう!」
高原君が来た。
世界がたちまち眩しくなったように感じた。
「お、お、おはよう。」
私は彼に圧倒された。
普段あまり面と向かって話す事が無かったが、改めて見るとなおカッコイイなおい。
「ごめん、待った?」
彼が気を使って聞いてくる。
無論、私が早く着きすぎただけなので高原君は何も悪くない。だが、
「え、あの、待った、っていうか、その」
私が早く着きすぎただけだから気にしないで、なんて気の利いた事は当然言えなかった。
「まぁいいか、とりあえず行こうよ。」
彼は私のオドオドさに気を取られる事もなく、明るく話しかけてくれる。
「う、うん。」
私もなるべく明るく返事をする。
水族館へは少し距離があった。
歩いている間も高原君は積極的に私に話しかけてくれた。
「水族館、楽しみだね。」
「そうだね。」
「魚とか詳しいの?」
「え、いや、うーんまぁまぁかな。」
私は彼のおかげで何気ない会話は少しずつ普通に出来るようになってきていた。
しかし、急に話しかけられたり、ありがとうとかごめんなさいなど自分の感情が大きく乗る言葉は相変わらず上手く伝えることが出来なかった。
それでも、彼は他の人と同じように私に話しかけてくれていた。
今日こそは彼の親切に応えたい。
私は歩きながら強くそう思った。
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