ハンカチ

「あれ、無い。」

私がそれに気づいたのは2時間目と3時間目の間の事だった。


私の大切にしていたハンカチが、無くなっていたのだ。


あっれー、どこで落としたのかな。今日ハンカチ出した記憶ないしなぁ。家に忘れたとかかな。




大切なハンカチなのに。




なんて考えている内に久しぶりの学校は終わった。









「ねぇ、今日新しいクラス、どうだった?」

帰り道、花菜が聞いてきた。

花菜は私の隣のクラスだった。


「うーん、特にかな。」

「そうなの?気になる人とかいなかった?」

「え、うん、まぁいなかったかな笑」

「あれ、その感じは本当はいたんじゃない?気になる男子笑」


んー、やっぱ言った方がいいのかな。

「正直言うと、いた。」

「え、いたの?だれだれ?」

「いや、名前は分かんない。出席聞いてなかったし。」

「どの辺が良いと思ったの?」

「いや、なんか良いと思ったっていうか、やたら目が合った気がしてたの。」

「なにそれ、運命?笑」

「そんなんじゃないでしょ笑」


「まぁでも良かったじゃん。出会いあって」

「そーだね。」


「でもさ、今日ハンカチ落としちゃって。」

「え、あの千遥が大事にしてたやつ?」

「そーなの。新学期早々ついてないわ。」

「どこで落としたの?朝のバス停とか?」

「確かに。ワンチャンあるわ。」


バス停でもし落としてたらもしかしたら誰か拾ってくれてるかもな。警察行ったら誰か届けてるかもしれない。ちょっとだけ希望が持てた。


「っていうか明日から授業始まるんでしょ?もう勉強するのめんどくさいわー。」

「まぁ今年は受験の年だし仕方ないんじゃない?」

「千遥は頭良いからいいよね、私なんか全然ダメだし。」

「いやいや、私もそんなにだよ。」

「そんなに頭良いんだから、目が合うっていう彼に恋愛頭脳戦でも仕掛けて彼氏にしなよ。」


この人は何言ってんだろ。

率直に思った。


「いや、マンガじゃないんだし。そんなの普通ないから。」


そう、これは現実だ。

事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだと思う。



そうそう、運命的な出会いとか王道展開とか

そんなのありえない。

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