第12話 復帰

僕は、症状はまだ残るが、次のステップに行く為に仕事の復帰を考えた。


以前は事務仕事で自分の力が発揮出来なかった為、

自分の強みであるコミュニケーションを必要とする仕事を考えていた。


そこで、興味があったのが読書の中で勉強した整体の仕事だ。


自分自身、筋肉をほぐしてもらうのが大好きだ。


何か、詰まっているものが流れてくるようなあの感覚が忘れられない。

気持ちまで楽になる。


そして、整体師がかけてくれる優しい言葉で自分はストレスを解消する事が出来た。自分も言葉と手技を使って多くの人の力になりたい。

そう思った。

さっそく僕は学校を探し出し、整体を学ぶ事にした。


主に学ぶのは骨格矯正、筋肉のほぐし、足つぼの技術だ。

この学校は自分のペースで通うことが出来てとても良かった。


しかし、さっそく壁にぶち当たる。


それは、尋常では無い程の指の痛みだ。

全体重を指に込める為、耐えられない程の痛みが特に親指に来る。


先生は経験を積むことで痛みは消えてくると言ったが信じられなかった。

そして、問題は、手技を覚える度に僕のあの症状がやってきた。


手技には首、肩、背中、そして腰にいくなど手順があるのだが、

自宅で復習をしていると何度も何度も練習をしてしまう。

何度も練習をすることは良いことなのだが、練習を止められなくなるのだ。

そして練習をしていると自分が出来ているのか、

先ほどはマグレで出来たのでは無いかと不安になり、

またさらに何度も練習をしてしまう。


その後、布団に入った後も何度も手技の手順を脳内再生してしまう。


何度も確認、確認、確認。折角、仕事復帰の為にスタートしたこのことで強迫性障害の症状が出るなんて……。

指も相変わらず激痛だ。

今では、自分が投げかけた言葉でさえ、他人を傷つけたのではないだろうか。

今の発言は駄目じゃないか。

そんな事を過剰に考えてしまって、得意だったコミュニケーションでさえ、さらに取れなくなっていた。


これで自分は本当に社会で生きていく事が出来るのだろうか。

少しばかりの貯金も、もう底をつきそうなのに……。

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