転生!?
第4話 新しい生
再び目が覚めると、そこは狭い暗闇の中だった。
内側からコツコツと叩いてみても、びくともしない。
(なんだろ…人外って言ってたし、鳥なのかな?それなら、これが卵の殻ってことで納得できるけど…)
急に、光が差し込んできた。どうやら、どこかに
(うわっ!眩し…くない?普通、暗いところに急に光が入れば眩しいはずだけど…?
暗闇の中、手探り状態で隙間を探す。
(隙間は~っと、あったあった。ココから出れそうだな。と言うか、手探りって鳥は手が無いよな?それに、生えてる位置がおかしいような…?まあ、良いか…とりあえず、外に出よう。)
隙間から、這い出るように殻を抜け出す。
(ん…?抜け出す…?俺が知ってる鳥は、殻を破って生まれたような…)
手探りで自分の体の状態を見る。目が悪いのか、あまり物は見えていない。しかし、その分鼻はいいのか、匂いでモノがはっきりと確認できた。
(まずは、自分の状態でも確認するか。)
身体に意識を向けて動かす。明らかに人間と違った多くの足の存在を感じ取ることが出来た。いや、出来てしまった。
(うん…昆虫かな…?マジかよ…いや、カッコいい奴かもしれない!希望は捨てないでおこう。次は、この手のようなもの。)
今まで、手のように使って周りの物を感知していたそれは、他の6本の足とは明らかに独立しており、さらには頭部から生えていた。
(うん…手だと思ってたけど、訂正します。触角です。はい。しかも、かなり長めです。あぁ…嫌な予感しかしねぇ。あぁ…最後だ。体全体のフォルムを触角で探ってみるか。)
体の長さの半分程もある長い触角を使って、体の形状を調べていく。
後ろ足がよく発達しており、さらに多くの棘がある。体は平べったく細長い
(こ、これは…!――――何の虫だ?こんな虫は見たことが無いぞ?
しばらく自分の正体を考察していると、周りからピキピキガサガサと言う、殻を割って這い出るような音が聞こえてきた。
(なんだ、この音?聞いたことがあるような…)
そう思い、周りへと意識を向ける。
すると、先ほど自分が出てきたと思わしき殻から、10匹以上の自分と同じ形状の生物が這い出てきていた。
さらに、気づかなかったが他にも殻は多くあったらしく、数十個の殻の中から、大量の虫が這い出てきていた。
(うへぇ…。虫に
恐らく200以上は確実にいるであろう大量の子虫たちが、すべて
親虫は子虫たちの20倍ほどの大きさであり、全体像を
一番特徴的なのは長い触角だ。体長と同じかそれより長いぐらいの触角が、思わず嫌悪感を抱かせるほどの存在感を放っている。後ろ足が発達して
(フムフム。この体の形状――。これは、アレ、だよな?名前を言うことさえ
そう。転生先は、100人に聞けば100人が嫌いと答える(好きと言う人も居るかもしれないが、ごくごく少数派。)だろう
(あっ、あの女神!転生先最後まで言わなかったのはこれが原因か!?確かに、口に出すのも嫌だけど!転生させられるって聞いたら全力で
ゴキブリと言う最低レベルな転生先に絶望していると、突然親虫が子供に噛みついた。
(えっ…?噛んだ?自分の子を?なんで?仲間じゃ…)
そうして俺が混乱している間にも、親Gは子Gを
バリバリゴリゴリと兄弟の一匹が
他の兄弟たちは仲間が食べられているのにも関わらず、餌を探しに行っている。中には他の兄弟を
(おいおいおいおい…!マジかよ、共食いしてるぞ!早くここから逃げないと…!)
そうは思うものの、生まれたばかりで
そうして四苦八苦していると、兄弟の一人が迫って来た。おそらく食べるつもりなのだろう。
逃げようとしても6本足に慣れず走ることが出来ない。すると、右の真ん中の脚に何かが噛みつくような感触と異様な危機感が全身を襲った。
おそらく、兄弟に
反対側からも兄弟がやってきて俺を
激痛と恐怖で何もわからなくなり、ただがむしゃらにジタバタと暴れた。脚を
しばらくの間、そうして暴れていると足を齧られていた感覚がなくなっていることに気付いた。あれだけいたGはどこにもおらず、狭い通路のような場所らしい。
あれだけ動けずにジタバタしていたことが嘘のように、思ったとおりに体を動かすことが出来るようになっている。おそらく、暴れることで体の動かし方が身に付いたのだろう。
恐怖から解放されると、腹が減っていることに気が付いた。
しかし、ここには食料になりそうなものなど一つもない。
仕方が無いので、直感の
(はぁ…しかし、ゴキブリに転生か。生まれた
自分の
しばらく進むと、開けた空間へと出た。
天井は高く、親ゴキでも余裕で入り込めそうだ。前方にはぽっかりと大きな裂け目のようなものがあり、そこから出られそうだ。
(やっとこのダンジョンから抜け出せる!)
ダンジョンとは言ってみたが、G以外にモンスターの姿は見ていない上に思い描いたような神秘的な場所ではなく、埃っぽい隙間のような場所だったのだが。
前にある光を目指して進んで行く。
齧られた脚の痛みは消えており、移動も違和感なく行えるようになっていた。
異世界への期待が、自分が今どういった存在であるのかを忘れさせていた。
木で出来たような裂け目のようなものを抜けていく。
するとそこは――――――巨大な民家のような場所だった。
机、椅子、食器、花瓶、花―――何もかもが今までに見たことのあるモノの数十倍は大きく、始めてみる物も、呆れるほど巨大であった。
(で、でけぇぇぇぇぇ!?なんだここ!?巨人族の家か?で、デカすぎるだろ!さ、流石異世界。ダンジョンから出てすぐに巨人族の家とは…。あっ、そういえば、ダンジョンは―――)
出てきたダンジョンが気になり、ふと後ろを振り返る。
が、そこにはダンジョンなど存在せず、これまた巨大な
――このとき初めて、周りが大きいのではなく自分が小さい、と言う真実にたどり着いた。この家具は通常サイズで、Gの幼虫である自分も通常サイズである――と。
(あっ。なるほどね。うん。そういえば普通のGは大きくても5センチぐらいだったな。あの親Gも、せいぜい10センチぐらいだったのか…?って、異世界転生で原寸大Gって、詰んでね?)
よくイメージしている異世界は、モンスターが存在しており、科学よりも魔法が発達したザ・ファンタジー世界である。そんな現代日本よりも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます