第3話 転生の特典

(剣についての要望かぁ…日本刀みたいなのがいいかな。あと、燃える刀みたいな感じは出来るか?)


「出来るわね。でも、すぐには出来ないわよ。もしかしたら失敗するかもしれないし。」


(どういうことだ?剣に付与するのに、成功率でもあるのか?)


「まぁ、まずは付与についての説明するわ。付与には、属性ぞくせい付与と固有こゆう能力付与と言うものがあるの。」


(属性付与は分かるが…固有能力?伸びる剣とか、そんな感じか?)


「えぇ、まぁイメージはそんな感じね。人間や神々が使っている武器や道具には、“いわく”と呼ばれる物の由来のようなものがあるの。この“曰く”がある程度強いと、稀に不思議な効果・・・固有能力が発現することがあるの。こういう道具のこと“曰く付き”を、と呼ぶわ。」


(曰く付きって聞くと、事故物件が思い浮かぶよな。物の由来ってことは、量産品には付かないのか。)


「まぁ、事故物件も似たようなものね。量産品には基本的には付かないけど、使っている間に曰くが付くこともあるわ。」


(ほ~ん。でも、そういうのは本来の持ち主しか力を全部発揮しきれないものじゃないのか?普通。それだと、俺が使えないと思うんだが。)


「いい質問ね。そう。本来は、元の持ち主が使って初めて完全な効果を表すのが、固有能力なの。でも、“神器じんぎ”は少し仕様が違っていてね。ふつうの武器は、曰くを一つ・・・多くて二つまでしかつけられないのだけれども、神が造った道具・・・いわゆる“神器”は何個もの曰くが付くの。」


(ん?なんで普通の武器は一つか二つなんだ?というか、それが俺の武器に何の関係があるんだよ?)


「それは、曰くに武器が耐えきれないからよ。曰くと言うものは、強い思いが道具に付着したものなの。強い思いで世界の法則を捻じ曲げて不思議な能力を手に入れているわけね。ふつうの道具だと、世界に干渉かんしょうするだけの力に耐えきれずに自壊じかいするの。それが、神器だと許容きょよう量が大きいから、道具の許容量分だけ曰くをつけ放題なのよ。一番多い曰く付きだと、10個もの曰くが付いていたそうよ。」


(10個もか…どんな能力なんだ?)


「えっと確か、『形状変化メタモルフォーゼ』『絶対命中ヒット』『帰還ブーメラン』『治癒不可アンチヒール』『所有者不死化アンチダイ』『破壊不能アンチブレイク』『竜殺しドラゴンキラー』『神殺しゴッドキラー』『万物創生クリエイション』『万物破壊ブレイク』だったわね。」


(うえっ…僕の考えた最強武器感が凄いな…。でも、結構よさげだな。それはないのか?)


「ダメね。他の神の物だし、破壊されているもの。」


(え?破壊不能ってことは、壊れないんじゃなかったのか?)


「10個もの固有能力が付いたソレは、たった一つの武器破壊の固有能力持ちの短剣に砕かれたわ。薄く分散させた“曰く”は、武器の許容量限界まで強められた武器破壊の“曰く”に、耐えきれなかったのよ。」


(あぁ…。力は集中させた方が強いってことか。)


「そういうことよ。で、話は戻るけど、神器には最初から特別な“曰く”が存在しているわ。『神造具じんぎ』って言う“曰く”がね。この“曰く”はその道具や武器を強化してくれる効果があるの。」


(うん、だから、それが俺が曰く付き武器を使えるようになることに何の関係があるんだよ?)


「それを今から説明するのよ。せっかちな人はモテないわよ。」


(やかましいわ。とっとと説明しろや。)


「はいはい。この『神造具』と言う曰くには、あまり知られていないのだけど、造り手が持ち主を自由に決定できるという効果があるのよ。それと、神器は製造した神の権能けんのうが付きやすいのよ。」


(へぇ~。そうなのか。)


「あまりピンと来ていないようね。まぁいいわ。あなたはどんな“固有能力”がいいのかしら?付けれそうなら、知り合いの神に頼んで付与してもらうわ。」


(う~ん…そうだな。じゃあ、一緒に成長してくれるようなのがいいかな。あと、炎の剣だな。)


「あぁ、それなら簡単ね。私が造ればいいわ。私は、努力と勤勉をつかさどっているのよ。成長率とか進化も権限内よ。でも、炎は無理ね。私、火の神と仲が悪いのよ。」


(あぁ、じゃあ成長する剣にしてくれ。あ、形状は日本刀だぞ、忘れるなよ。あと、火の神と仲が悪いって大丈夫なのか?火をつかさどる神って、何かと鍛冶の神と結び付けられることが多いけど?)


「あぁ…昔は仲が良かったんだけどね。―――あのひとに鍛冶を習ってたら、いつの間にかその神より腕が良くなっててね…。そしたら、あの神ったら拗ねちゃって…まだ口を利いてくれないわ。」


(さ、流石、努力の神…本職に負けないレベルで鍛冶を極めたのか…。というか、努力の女神ってなんか地味だな。)


「う、うるさいわね!努力で神にまで至ったんだから、凄いのよ!」


(努力でれるようなものなのか?)


「えぇ。徳を積めば、行けるわね。そうね…108年間ずっと修行してたら、才能があれば行けるわよ。」


(うん、無理。そんなに修行したのかよ…。)


「あら?私は才能が無かったから1000年以上掛かったわよ。単純な即神仏そくしんぶつの10倍以上はかかったのよ。」


(1000年!?ヨボヨボどころじゃないぞ…骨まで風化して化石になってるだろ…。)


「うふふ。最初の10年で老いなくなったわ。」


(老いなくなるの早くね?もっと後の方だろ…)


「若いままでいたかったのよ。だから、10年間ずっと不老の修行に心血を注いでいたわ。」


(普通にすげぇわ。と言うか、10年でそこまで行けたんだったら、もっと短く神になれただろうに…。)


「あぁ…実は、いろんな修行したのよ。普通、一つのことを極めたら神になれるのだけれど、他にもいろいろやりたいことが多くてね…。」


(うわぁ…努力の神って、ほんとに努力の神なんだな…。正直言って引くわ…。)


「な、何よその言い方。私の108の特技が一つ、拷問ごうもんを体験させてあげましょうか?」


(物騒ぶっそうな特技だな!?やめてくれよ。と言うか、特技多いな…。そんなに極めたのか…。)


「えぇ。神になる前に10個、神になった後に98個身に着けたわ。ついたあだ名は『器用神』と『便利神』ね。もちろん、私の前でそれを言ったひとは108の特技の餌食となったわ。」


(怖いわ。)


「おっと、話が大幅に脱線したわね。とりあえず、転生特典はこれでOK ね。」


(ちょっと待て、選べる基本特典がまだだぞ。あと、転生先も聞いてない。)


「あら?すっかり忘れてたわね。ごめんなさい。じゃあ、この候補の中から見て選んで決めてね。」


(おい。)

「何かしら?」

(なんも見えねぇが?あと、転生先を言え。)


「あら、ホント。貴方の実体がないのをすっかり忘れてたわ。じゃあ、私が選んであげるわ。そうね…これなんかいいわね。よし、これで準備は万端ばんたんね!」


(おい、勝手に決めるな!)


「では、真島大和さん。貴方を新しい肉体からだへと移転させます。」

(おい!ちょっと待て!なに選びやがった!?)

「始まりは生誕せいたんするところからですので、頑張って生き抜いてください。」

(いや、待って待って!せめて転生先だけでも教えやがれ!)

「この世界では、あなたは自由です。好きなことをして無事に天寿てんじゅを全うしてください。」

(待てよ!教えろ!)

「それでは、送ります。貴方の次の生にさち多からんことを!」

(待てやあぁぁぁぁぁァァァ…)


そこで、大和の意識はプツリと途切れ、どこからか発生した闇の中へと消えていった。

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