1日目


去年の夏休みは、最悪な気持ちで始まった。

佐藤家には、毎年夏休みになると、九州にある祖母の家を訪れる習慣がある。

海沿いの小さな村で、住人のほとんどは老人で、交通は本当に不便だから、綺麗な海、山、土地を持て余している。


「拓斗。今年はカンちゃんも帰ってくるんだから、シャキッとしなさい。」


新幹線の中、憂鬱な表情でスマホを見ていた俺に母さんのお節介。


カンちゃんというのは、俺と同じ歳で、5年前まで祖父の村に住んでいた。

当時はやんちゃな男の子って感じで、顔はサッカー選手みたいに日焼けしていた。

来る度に1日中遊んでいたが、5年前に父親が転職し、その影響でカナダに引っ越して以来あっていない。

今年は久しぶりに帰省するらしい。


だが、それこそ、俺の憂鬱の種なのだ。

小3の時に仲良かった奴と中2になって会うんだ。気まずいなんてもんじゃない。


そんな俺の不安も知らずに、母さんは家族ぐるみの宴会なんてものをご親切に企画しやがったのだ。

本名も覚えてない、カンちゃんとの再会は不可避となったのだ。


最寄り駅から1時間のバスに乗り、祖母の住む霞ヶ村へ着くと、祖父母と、俺と同じくらいの歳の女子とその両親と思われる夫婦。え、可愛いんだが。

でも、お近ずきになる勇気なんてあるはずもなく、目立たないように俯いたままでいた。

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7日間、君と。 藁観 @simerikeno-rougoku

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