第5話

 集まっている人を観察してみるとやはり混乱している人の割合が多くみられた。その中には顔見知りの人もちらほら見受けられた。

「あっ……。良かった、無事だったんだね。」

 その中の1人が私に気付いて話しかけてきた。その子は比較的他の子よりも落ち着いているらしく、周りの人のなだめ役をしていた。

「まぁ、なんとか……。それにしても、一体何が起きたの?ただ事でないことは分かるんだけど……。」

「う~ん、そうだねぇ。話すとちょっと長くなるけど……。どこまで覚えてるかな?」

「えっと……。建物が崩れたあたりで気絶しちゃったから、それ以降のことは……」

「じゃあ、そこから話すね。」

「はい、お願いします。」

 私達の間にある緊張感。これからこの子が話すことは真剣なことなんだ、と思うと無意識のうちに姿勢が伸びていた。

「了解。建物の崩壊が起きたあと、ご覧の通りみんな混乱状態だったんだ。勿論、例外なく私もね。だから確実なことは分からなかったりするんだけど、急に空が曇ってきたと思ったら雨が降り始めたんだ。」

「雨って……この酸性雨のこと?」

 まぁ、それ以外ないだろうな、とは思っていたが念のために確認する。

「そう。瓦礫が溶けてるから強いんじゃないかな。それでね、とりあえずは雨を防ぐ所に移らなきゃねってなってみんなで避難したの。それがここ。みんな集まって少ししてから先生たちが仕切ってくれて怪我人や生存者の確認・救出をやってくれてるの。」

 確かに。先程から教師達がせわしなく動いている。だが、この場にいるのはせいぜい数十人程度である。教師も数人しかいないように思われる。

「マンモス校とかうたわれているのに……。あまりにも人が少ないように感じるのだけれど……。」

「えっとね。今も探してるんだけど、生存している人はやっぱり少なくて。人手不足っていうのもあるんだけれど……。外にいる先生たち合わせても50人弱っていうところじゃないかなって思う……。」

 驚いた。確かに少ないと思っていたがまさかそこまで減っているとは思わなかった。元の約20分の1にも満たない程になってしまっているとは。

「本当に……?そんなに減ってしまったの?何処か他の所に身を潜めているとかではなくて?」

「う~ん……。見た感じ避難出来る場所が無さそうだからなぁ……。何処かに隠れている可能性もなきにしもあらずだけれど、極めて低いと思うよ。それで、減ってしまったってのは確かだよ。数時間おきに探したりしてるんだけど、進展はそんなに無いみたい。だからね、貴女が見つかったのも奇跡に近いと思うわ。」


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