第18話〜アイツら付き合ってんじゃないの?

そのエリンという他校の制服を着た人は語り出した。なんだか今日は制服着ている人が多い、この人達も、もしかして部活?


あと2ヶ月で夏だしそりゃあ部活動の練習も盛んになるか、帰宅部の僕にはあまり関係がないけどね。


「中学の時も高一の時もアンタのせいでアタシはずっと準優勝銀メダル…今こそ、その恨みを晴らすのよ!未知葉高校のエースからリベンジを申し込むわ!」

(あ、女の子なんだ。他校だとズボンも許可されてるのかな。)


真坂さんはその人の熱弁を無視して、背を向けた。真坂さん的にはアレかな?無駄な争いに巻き込まれくない感じの…ラノベの主人公みたいだね。


「東山部長、ただの人違いですね。今日は帰った方がよろしいかと。」

「負けるのが怖いから逃げちゃうのかなぁ?「和の姫様」が「負けの庶民」になっちゃうね?」

「もうエリンちゃんやめた方が…」


エリンは煽り散らかしていた。それを隣の三つ編みの先輩が、止めさせようとするが止まらなかった。


しかしその売り文句を真坂さんは買った。


「そこまで言うならやりましょうか。あなたがちゃんと有言実行出来るのか、見せてもらうわよ。」

「アンタを泣きっ面にしてやるわ、勝負!」


両者はバチバチにガンを飛ばしている。2人とも本気でやるみたいだ、どんなテニスを見られるんだろう。ちょっと楽しみだけど2人とも顔がけわしくて怖い。


「もうどうなっても知らないからね…」

「本人同士が戦うんだから本人に任せとこよ〜りりか。私たちは日陰に…」


伊沢部長は泣きかけており、その人の肩にくみ先輩の手が励ましの気持ちを込めて置かれた。だがエリンは伊沢部長を指さした。


「ダブルスの3セットマッチだから伊沢部長も入るのよ!」

「はひ…」


強引にエリンの手に引っ張られて伊沢部長はラケットを持たされた。そして真坂さんは東山部長に申し訳なさそうに言った。


「東山部長が入るまででもありません、私1人で十分です。」

「ん〜それなら私は審判でアツシに入ってもらおうかな?」


くみ先輩は僕を指さした、謎の人選に周りの小学生達も驚いている。


「ぼ、ぼくぅ?!なんでじゃ?!」


テニスなんて体育の時しかした事がない初心者が全国大会準優勝している人に勝てるだろうか?否、そんなのできっこないよね。


「やったじゃん兄者。」

「うわハーレムかよ死ね。」

「てかあっちの部長もおっぱいデカくね?」


弟は優しい言葉をかけてくれたがあとの二人は煩悩の塊を僕に投げつけた。あ、真坂さんもこの人選には驚いてる。


「本気ですか、彼は初心者でしょうしプレーについていけるかどうか。」

「あはは!そなたなら初心者が入ろうが誰が一緒だろうが圧勝出来る…でしょ?」


一瞬くみ先輩の顔から笑顔が消えた、貫禄はあるが目から期待が飛び出している。なんだか人が違うみたいで、内緒だがちょっとギャップ萌えをしてしまった。


今日初めてあった相手にギャップ萌えするなんて…ちょっとこれは駄目じゃろ。そして真坂さんは覚悟を決めたようだ。


「…!その期待に応えてみせます。」

「そういうやつ嫌いだからさっさと始めるわよ、さっさとラケット持ちなさいよね。」


しかしこの良い雰囲気をエリンがぶっ壊した。僕はくみ先輩のラケットを借りてテニスコートに入った。


「さあ、その自信を叩き切ってやりましょうか和田巣くん。」

「で、できる限り頑張ります。」


うわ緊張する。相手はテニス部部長と他校のエースだし、流石に真坂さんもペアが初心者だとやりづらいよね…


「真坂そなた!アンタの彼氏ごとぶっ潰して粗大ゴミにしてやるわ!」

「ちょっと彼氏さんにまで被害を拡大しないの、エリンちゃん!」

「えーいいじゃん伊沢部長。」


…この2人は何を言っているんじゃ?ぼくが…かれし?隣にいる真坂さんもこれには慌てているみたいだ。


「か、彼氏ですって。」

「ななな何言ってんだ!僕達は友達なんだ!そんな関係じゃない!」

「うわっ、すぐに否定すんのは臭いわ。」


エリンが僕達を怪しんでいる。こんな前までぼっち飯だった奴の彼氏とか嫌だろう、常識的に考えて。


「そんな関係じゃないよ〜まだね。これはくみちゃんのお墨付きだよん。」


くみ先輩がフォローを入れてくれた。良かった、これなら違うって証明出来るよね。


「じゃあ本当に違うんだね…」

「ちっ、弱点が見えたと思ったのによ。」


エリンと伊沢部長は落胆している。そーだよ!僕と真坂さんは友達なんだ!あ、真坂さんからしたら僕って友達(仮)なのかも…(仮)はないよね?


(東山部長、まだねってなんですか。まるで私と彼が未来で付き合うみたいな予言して…あの人の直感は当たるけれど、彼はこんな私の事なんか好きにならないわよ。)

「ごめんね真坂さん、嫌だったよね。」

「…何も言わないでおくわ。」

「あっ、うん。」


えぇ?!これ完全に友達(仮)になってない?!前ネットで見たぞ、そういう冷やかしは一番駄目だって!もー僕は怒った!この試合、本気でやる!

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