第15話〜ね、ちゅうしよう
(土曜の3時に広い公園で散歩、良い日だ。)
そう今僕がいるのはこの都市で2番目に大きいとされる公園に来ている。5月はやはり過ごしやすいなぁ。
「疲れたしお水お茶ジュース♪」
ずっと歩いていると喉が渇いてきたので、自動販売機によった。やっぱりここは定番のアロハスか…ぽーいお茶でもいいねぇ。
「えっ、今なんか大きな音が…気のせいか。」
後ろからドサッと大きな音が聞こえた。結構大きかったし、確実に物ではないことが分かる。そして僕は振り返った。
(全く気のせいじゃなかった。真坂さん?真坂さんなの?!)
なんと真坂さんが倒れていた。髪はあの時と同じポニーテールで私服姿?だった。僕にはファッションセンスがないためこれが私服なのかどうか分からない。
急いで彼女の所へ来て、真坂さんを揺さぶった。この炎天下の中だから汗がびっしょりと出ていた。
「ま、まままま真坂さん?!死ぬな!」
「…ね、ちゅうしよう。」
真坂さんは倒れた状態で微かな声で言った。
(ねぇ、ちゅうしよう?キスしよう?!ぶっ倒れてんのに何言ってんの?!)
「ちゅうはしません!」
「…ち、違う。」
(急になな何?!そんな事する訳ないでしょ!)
彼女は意識が
「何が違うんじゃ?!」
「…熱中症。」
僕は「ちゅうはしません!」とかいう超アウトな事を言ってしまった、気づいたら本当にすごく恥ずかしい。急いで水を買いに行った。
「水を買ってもらうなんてごめんなさい。それとありがとうね、次何か奢るわ。」
「そ、それより体調は大丈夫?」
真坂さんは水を一気飲みしている。さっきの事は覚えてないのかな。そっちの方がありがたい…ありがたや。
「もう平気よ、それよりさっきの事だ…」
「こ、この前誘ってくれてありがとう!」
僕は話題の転換を初めて家族以外にした。それにペアワークをちゃんとしてくれる人なんて初めてだし、お礼も言っておかなきゃ。
「あれはただ課題を終わらせるために誘ったんだもの、礼を言われる程の事じゃないわ…無駄だったみたいだけどね。」
彼女ははにかんだ、皮肉を込めた笑みを浮かべて。
「はぁ…こんな事で倒れちゃうなんて何て情けないのかしら…!こんなんじゃ関東大会の予選にだって行けやしないわ…!」
真坂さんは下をうつむいた。彼女は自分の事が嫌いなのだろうか?そんな真坂さんを、僕は見たくなかった。
初めての友達だし笑って欲しい。そんな甘い考えが頭から出ていってしまった、そう謎の老人が一喝したのだ。
「ふん甘いな、そなた。」
袴を来た老人が真坂さんの下の名前を言った。だ、誰ですか?新手の宗教勧誘かな。
「師匠!どうしてここに?」
「それはお前に助言を…うぉっ。」
(師匠?!おい師匠!!強そうな人が倒れちゃったよ。)
僕達はその師匠を日陰のベンチに運んだ。水もまた買ってきて急いで飲ませた。
「悪いな青年、礼を言う。」
「だ、大丈夫ですか?その、師匠さん?」
「師匠も私もまだまだ体調管理が甘かった、という事ですね。」
「ははっ、嬢ちゃんに言われるとはワシも未熟という事だな。」
2人は仲が良さそうに喋っていた、というかこのじいちゃんマジで強そう。
「ま、真坂さんと師匠さんは何で倒れちゃったんですか?」
「10キロ程度を走っていたら急に…半人前どころじゃないわね。」
「ワシも朝と昼の稽古を終えて3時間ぐらい…だろうか、散歩をしていた。」
「そうですか…」
そら倒れるに決まっとるやろがい。なに平然と当たり前みたいな顔しとるんじゃ、この人ら。もう体力お化けしかいないんかここは。
「じゃあまたね、和田巣くん。」
「青年、さらば。」
そして2人は体力が戻るまで少し話してから帰った。
「結局どういう組み合わせなんだろう?道場の師範関係?恋人?いや年の差エグすぎじゃろ、違うよなぁ…」
(まだ脈拍数が多いわ…今日はちょっとだけ休んだ方がいいわね。)
2人は色々とすれ違っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます