第12話〜褒めないでよ…はずかしい
廊下からでも匂う畳のいい香り。真坂さんに案内された部屋は、やはり畳の部屋だった。
「この部屋ね。」
黒い机の上には大量の原稿用紙に座布団があった。せっかく雰囲気の良い和室が原稿用紙のせいで台無しだ。
「原稿用紙こんなに用意したんだから、ちゃんと書いてよね。まぁ、私が1番書けないと思うけど。」
3人とも引いた。100万文字も書くとなるとこんなに原稿用紙がいるのかと思ったからだ。
「A3、400文字の原稿用紙が…ざっとみて5000枚ぐらいあるんだけど?」
「それを半分に分ければ丁度かッ!やはり俺らの高校の教師陣はイカれているッ!」
「み、見てるだけでめまいが。」
これで締切は明日だ。マジであの先生は頭がどっか狂っとるんじゃよ、間違いない。
「これを3時間以内に終わらせないと。和田巣くん、まずは内容の確認よ。」
「て、手分けして書こう。」
「書くスピードと綺麗さは期待しないで。先に物語のあらすじは書いたから残りは2400枚よ。」
「100枚も書いたのに…まだ2400なんだ。」
驚いた、100枚も伸ばして書けたのかと。真坂さんはやっぱり凄いんだなぁって。
「引き伸ばしてもまだまだだわ。もっと頑張らないと。」
彼女は前、全国大会もあると言っていたことを思い出した。それで今日も部活で汗水垂らしてこんな鬼畜な課題をしている。どんだけ自分に厳しいんじゃ。
「第二次世界大戦の時…だよね?」
「そうね。」
「な、ならその時の時代背景も入れる?」
「それは盲点だったわ。お祖母様お爺様から聞いた話も入れたら500枚は超えるかしらね。」
「そ、そう思うよ。」
「僕もじいちゃんに聞いた話を書くね。」
「承知よ。」
自分の案が採用される時がこんなに嬉しいとは思わなかった。そして真坂さんは物凄く早いスピードで原稿用紙に書いているのに、全然文字が崩れていない。
そして2人合わせて合計1000枚を書けた。疲れてしまったので、休憩として真坂さんと一緒に隣を見に行く事にした。
「何でアンタらそんな早いの?」
「あっ、真坂さんが書くの早いから。」
僕達は後残り1400枚程度で夜崎さんと佐賀屋くんも手分けして書いているが、残り1600枚ぐらいだった。
「ま、真坂さんって凄いよね、あんなに綺麗に書いてるし。」
「…褒められるものでもないわ。」
「すごく達筆だし、内容もちゃんとあるし。」
「休憩終わり!この無理難題な課題を終わらせるわよ、和田巣くん。」
なんか真坂さんの頬赤い…あっ!僕が褒めたから?でも最近ぼっち離脱した奴に褒められても嬉しくないだろうし、きっとそういう体質なんじゃな。
(字なんて褒められた事もなかったわ。な、何なのこの人。)
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