第9話 メイド喫茶

「そういうことは一切お断りしていますっ!」


 1人の少女の声が教室中に響いた。その瞬間、教室に空気が張り詰めたのが分かった。


「は?誰、アンタ」


「…………このメイド喫茶の全体取締役です。連絡先の交換などは一切お断りしています」


 その少女というのはもちろん柊だ。助けてくれたのか?でもなんでここに柊が?


「別に良くない?減るものじゃないんだし」


「そういうことではないですっ。ここではお断りしているだけです。個人的に別の場所で聞くのは個人の自由です。ですがここは今喫茶店なので」


「あっそ。で?私達に出ていけって?」


「いえ、そんなことはないですっ。さっきから彼も注文を聞きたがってますし、よければぜひ食べていって下さい」


「はあ?」


「楠くんっ」


「あ、ああ。ありがとう柊」


 柊は、やっぱりすごいな。あんなに騒いでた人たちを一瞬で沈めた。それも上手く商売にもっていったし。柊は将来金持ちになりそうだな。うまいこと話を持っていきそうだ。


「ご注文をお聞きいたします」


 俺は、もう一度その女子軍団に注文を聞いた。


「はぁ。アンタの彼女めっちゃ嫉妬深いねぇ〜話してただけなのにさぁ」


「ま、まだ彼女じゃっ」


 柊が彼女?側から見るとそう見えてたのか?嬉しい…って今はそうじゃなくて。目的を忘れるところだった。


「へぇ〜彼女じゃないんだ」


「えっ⁉︎」


「ま、いいけど。残念。せっかくイケメン彼氏できると思ったのに」


 そう言ってその女子は顔を近づけてきた。良い香りが鼻腔をくすぐる。


 近いっ


「ゆみ、やめときな」


「はいはい。あっちからものすごい形相で睨んできてるしね」


「そうそう。さっさと注文しよ」


「お勧めは?」


「あ、このパフェです」


「じゃあ私はそれにしよ」


「私も」


「じゃあこのパフェ2つ下さい」


「かしこまりました」


 注文を受けると俺はそこから早々と去り、キッチンへ向かった。


「パフェ2つでーす」


「お、了解。晴人お疲れ様」


「お前っ大和っ見てたのかよ」


「みるだろ。あんな面白いの見ない方がおかしいっての」


「なら助けろよ」


「え、嫌」


「はあ。お前はそういうやつだったよ」


 大和は根は優しい奴なんだけど、無意識に人で遊んでいるというか。なんでも面白がってやってしまうというか…絶対にこいつは警察官にはなれないな。守るんじゃなくて逆に世界を滅ぼしそうだ。そしてこいつは前世魔王か何かだったな。


 そんなしょうもないことを考えながらぼーっとキッチンの扉に立つ。


「あ、楠くん!ちょっとこっち手伝ってくんない?」


「ああ」


 まだ昼前だというのにかなり繁盛しているということで誰かが買い物に行くことになったのだが、誰が買い物をに行くかなかなか決まらなかったらしい。それで暇そうにしていた俺に頼みにきた、と。いや、酷くないか?暇そうにしてたって言っても、ものの2,3分なんですけど?


「ってことで行ってきてくんない?」


「ええ」


「買い物終わったら楠くんはあがっていいから。ね?」


「そうは言ってもなあ」


「お願いっ一生のお願い」


 そこまで言われると非常に断りづらい。委員長の頼みだしなぁ。うーん


「もうっ分かった。柊ちゃんと一緒でいいから行ってきて」


「いや何が分かったの!?」


 ひ、柊とおおおおおお?な、なんでだ?もしかして委員長にバレてるううう?


「もう面倒くさいなっ!柊ちゃーん、楠くんと買い物行ってきてー」


「ふぇ!?い、いいよっ!」


 いいのかよっ


「ねっ!」


「分かったよ」


 委員長、キメ顔とキメポーズで言ってくるのはやめろ。なんかめっちゃ大物を解決したみたいな顔してるんだけど?困ってたみたいなオーラ出すのやめてくれない?俺が困ってたんだけど、さっきまで。


「じゃあ行こっか。楠くん」


「ああ。って服!着替えないと」


「いいよ〜そのまま行ったら」


「おいっ委員長。駄目だろそれは」


「良いこと教えてあげるよ、楠くん。人はそこまで人のことを見てない」


「それは迷言だ」


「楠くん!か、かっこいいからそのままで良いと思うよ」


「ひ、柊?まあ、柊が良いなら」


「はい、行った行った」


 委員長に無理やり追い出された俺たちは、スーパーに向かった。


 気まずっ!




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