第7話 文化祭1日目(2)

「みっんなー!文化祭楽しんでますかー?」


 柊の声が広場全体に響く。ひ、柊…ミニスカなのか。ま、まあ、ダンスするんだからそうなるよな。うん。

 皆がコソコソと話している声が聞こえてくる。


「柊さん超可愛くね?」


「うんうん」


「俺は、上田さん派ー」


「上田さんめっちゃスタイル良いよなー」


「それな」


「上田さん、胸あるしな」


「一回で良いから俺をその腕の中に入れて」


 左横からすごいオーラを感じたので左を向くと、そこには 怒りオーラを出している高木がいた。


「人の彼女でっ…!」


 あーそういうことね。確かに今のは怒ったよな。こんなところでする話じゃないよな。でもこれはヤバい。高木を本気で怒らせたらヤバい。このステージが中止になっちまう。


「た、高木。落ち着け」


「うん。落ち着け」


「は?」


 ひいいいいいい。ヤバいヤバいヤバい。もうゾーンに入っちまってる。


「まず自己紹介しまーす」


「はーい。上田葵でーす!私達の踊りしっかり目に焼き付けて帰ってねー!…高木晴くん!見てくれていますかー?一生懸命踊るのでしっかり見ててねー!」


 う、上田さんナイス!


「おうっ」


 落ち着いた…しかも満面の笑みじゃん。彼女の力すごっ


「私は、柊志乃だよー!歌もダンスもすごく練習したから応援してね!………………く…くす……楠くん!!ちゃんと見てて下さいっ!」


 は?ん?


「お前、呼ばれてんじゃん」


「おおお!やるじゃん晴人」


 ん?ええええええええええええええええええ





「…高木晴くん!見てくれていますかー?一生懸命踊るのでしっかり見ててねー!」


 !?あ、葵ちゃん!?えぇ。ここで言うんだ…すごい


「次、志乃ちゃんの番だよぉ」


「へ?あ、うん」


 え?私も言ったほうが良いのかな。く、楠くんって。でも見に来てくれてるかなあ


「志乃ちゃん?…あぁ。言っちゃえば良いんじゃない?」


「で、でも来てるかわかんないよ」


「あ、それなら大丈夫だよぉ。さっき晴くんから連絡がきて楠くんたちと一緒に来てるって」


「ほんと!?」


 本当に来てくれんたんだ。嬉しい。よしっ


「私は柊志乃だよー!歌もダンスもすごく練習したから応援してね!…」


 ど、どうしよう?言っちゃう?言っちゃう?


 「………………く…くす……楠くん!」


 言っちゃった!言っちゃった!


「ちゃんと見てて下さい!」


 えええええ、私いいいいい。なんかこれじゃ…これじゃまるで…!


「う、うぅ。い、以上ですっ!」


 うぅ。言っちゃったよおぅ。


「あ、葵ちゃん…」


「大丈夫、大丈夫」


「ほ、ほんと?」


「うんうん。それに…」


 本当に私大丈夫だったのかなぁ?変じゃなかった?


「二人が両思いなこと皆分かってるし」


「あっ葵ちゃん!もう始まる」


 葵ちゃん何かいいかけてたけど…また今度聞けばいっか。楠くんに練習の成果いっぱい見てもらうんだ。


「では、まず最初の曲…」





「すごかったな」


「ああ」


「うんうん。めっちゃキレが良かったよな」


 無事に柊のステージが終わった。今、俺たちは人混みのないベンチに腰掛けて感想を言っている。

 それにしても柊のダンスめっちゃ良かったな。キレが良かったんだよ、キレが!!

 曲の方も自分たちで作詞・作曲したみたいだし。


「あーあ。沙代も出ればよかったのに」


「あ、そういやいなかったな」


「うん。そうなんだよ。誘われたのに断っちまったみたいで」


「なんでだ?」


「自分は目立つのが合わないからだってさ」


「それ、沙代本人が言ってたのか?」


「うん」


「でもそうは言っても杉田さん目立っちまってるよな」


「うん。でも極力目立ちたくないって」


 ま、まじか、アイツそういうこと言うやつだったんだな。でも確か前も生徒会に誘われたの断ってたっけ。もしかして…


「アイツ、自分から何でもやりたがらないタイプなのか?」


「よくわかったね、晴人」


「杉田さんがそういうタイプだったのは意外だな」


「たしかに」


「ああみえて臆病なんだよ、アイツ」


「「へー」」


「な、なんだよっ!その興味なさそうな感じ」


「いや、お前のノロケが始まるんだろうなと思って」


「ああ。いつもこうだもんな」


「お、お前らー!」


 すまないが、お前のノロケ話に付きやってやるつもりは一切ないんだ。大和。

 

「待て。俺ら次当番じゃなかった?」


「もうそんな時間か?」


「やばいよっ急げー!」


 まじで時間やばいじゃんかっおいおいー!

 走っている間、ものすごく笑われた。


「ま、間に合った」


「セ、セーフ」


「あっ三人ともやっと来た!早く準備して」


「「「おうっ」」」


 教室についた途端、学級委員に指示をされ、規定の服に着替えた。

 それにしても結構繁盛してるなぁ。初めはどうかと思ったけど人もたくさん来てるみたいだし、女子も楽しそうに接客してるし大丈夫か。


「で、俺は厨房か?」


「あ、楠木くん。ごめんけど接客の方に回ってくれない?」


「は?お、俺が?接客は女子じゃなかったか?」


「うん、そうなんだけど…ご覧の通り、大繁盛してるから人手が足りなくって」


「でもなんで俺なんだ?」


「え、イケメンだから…まあいいじゃん行った行ったー!」


「ええ」


「「がんばー!」」


「お前らっ」


 もう時間がないからと無理やり接客の方にまわされた。まあ仕方ない、やるか。でも接客って何をすればいいんだ?男子は女子が良いだろうし。


「あっ楠くん!君の接客は女子ねー」


「お、了解」


 女子のテーブルか…まあ仕方ない。


「あのー」


「え?」


 ん?今、俺声かけられたよな?接客のチャンスなのか?他の皆は忙しそうだし、俺が行くか。


「あー、ご注文は何にされますか?」


「わあ超イケメン!」


「だから言ったでしょ。さっきイケメンが入ってきたって」


「めっちゃかっこいいじゃん。私超タイプ」


「もうみんなっ」


 元気な人達だな…なんかめっちゃ盛り上がってるし。イケメン…って俺のことか?いやそんな訳はないな。そんなことよりも今は注文を聞かないとだ。


「あ、あのご注文を…」


「あ、そーだ。私と連絡先交換してくれない?」


「あ、ゆみゆみズルいー、私もっ」


「じゃあ私もー」


 連絡先…?なんでだ?まあここはスルーだな。……それにしてもなかなか聞き出せないな。


「あ、あの注文…」


「そういうことは一切お断りしていますっ!」


 教室に一人の少女の声が響いた。


 柊!?


 そこには息を切らした柊が立っていた。







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