第6話 文化祭1日目

 「うえっ!?」

 俺はスタホを持って飛び上がった。俺は、柊志乃にLINEを送ったのだ。どうしても落ちつかなくて返信が返ってくる間の3分間、ずっと部屋の中を歩き回っていた。


『楽しみにしてくれてありがと!私も2日目一緒に回るの楽しみにしてるよー!私は特に欲しいものとかないなぁ。でも一緒にお出かけしたいな。文化祭が終わってひと段落したらどこかに行かない?』


 うおおおお!マジか、柊も楽しみにしてくれてるのか。嬉しいいいい!って待て。んん?お出かけ…?そ、それはデートってことか?ま、マジか。


『そうだな。どこに行きたいか考えておいてくれ』


 よしっ良い感じ。それにしても柊とお出かけかぁ。柊の私服…どんな感じなんだろうな。……って何想像してんだ、俺!


 ガチャ


「おにぃ。夕食できた…っておにぃキモっ」


「うへぇ。なんだ、義妹いもうとよ」


 義妹がガチで引いてるんだけど?柊と一緒に行けるって思ってつい。


「わ、私先に食べとくから。おにぃ、落ち着いたら来てね」


「おうっ」


 それからしばらく悶絶してから夕食が冷めると悪いので、一階に降りた。



「では皆さん!明日と明後日の文化祭頑張りましょうっ!今日までお疲れ様でした。解散!」


 私は教壇に立ち、そう告げる。明日からは文化祭だ。教室はどこからどう見てもメイド喫茶だ。机も綺麗に並べてあり一つ一つの机の上に可愛らしいぬいぐるみが置かれている。全体的な色はピンクと白だ。まぁ、メイド喫茶だなって感じ。


「志乃ちゃん、帰ろぅ」


「あ、うん」


 親友の葵ちゃん。可愛くて賢くて優しくて…めっちゃ良い子。一年生の頃は同じクラスだったけど2年生になってクラスが離れてしまった。それでもやっぱり1番仲が良いのは葵ちゃんだ。


 2人でお互いのクラスの様子を話し合いながら、学校の門を出る。


「あ、そうだ。志乃ちゃんって二日目楠くんとまわるんだよね」


 手を胸の前で合わせて可愛らしく首をかしげてくる。葵ちゃんはやっぱり可愛いと思う。亜麻色のツインテールの髪、くりくりとした瞳。葵ちゃんがモテるのは必然といえるだろう。確か、多いときで一日に15回告白されてたっけ?モデルにスカウトされるぐらいだもんね。


「う、うん。そうだよ」


「そっかぁ。志乃ちゃん、告白しちゃえばいいのに」


「うえっ!?」


 そう。葵ちゃんは唯一私の好きな人を知ってる人だ。何かあると毎回私達をこうくっつけようとしてくる。楠くんが私のこと好きなわけないのに。まあ確かに前よりは話すようになったけど。


「そ、それよりも葵ちゃんは二日目高木くんとまわるんだよね」


「うん、そうだよぉ」


「ど、どっちから誘ったの?」


「えぇ〜私だよぉ」


「そ、そうなんだ」


 や、やっぱりこういうのって女の人から誘うものなんだ。じゃあデート誘ったの良かったかな。


「あのさ葵ちゃん。私、実は…」


「あ、マネージャーさんだ。どうしたんだろ。ごめんねぇ志乃ちゃん。私行くね。また明日ぁ」


「あ、うん。また明日!」


 よし、まずは明日のステージ頑張ろう!楠くんにす、すごいって言われたりして…えへへ





 よっしゃあああああ!文化祭だああああああ

 今日の天気は晴れだ。ありがとよ、晴れ女、晴れ男。


「おっすー楠」


「おはよぉ晴人ぉ…ふわぁ」


「おうっおはよう!」


「元気だな」


 何言ってるんだ。当たり前だろ!文化祭だぞ。勉強しなくていいんだぞ。さいっこうじゃねえか。


『今から第23回文化祭を始めます。各クラス準備を行って下さい。ではまず生徒会長からの挨拶です』


「お、始まった」


「それにしても結構、人いるな」


「まあ他校の人たちもいるからな」


「そうだよな」


「うちの学校の文化祭って他校の奴多いよな」


「うちの文化祭有名らしいからな」


 この学校の文化祭は規模が大きいと有名だ。たまに、これ高校生の企画なのかって思うようなのもある。何だっけ?去年すごいのがあった気がするんだけどな。文化祭の情報はSNSなどで伝わっているらしい。


 俺たちがわいわいとしているとキーンと音がして放送がかかった。


『みっなさあああん!いよいよ始まりました!第23回文化祭!盛り上がっていきましょおおおお!以上です』


 生徒会長…超テンションが高い。挨拶も毎回こんなかんじで真面目にやってるところを見たことがない。まあその方が気楽にやれるから良いんだけどな。


「お、始まったな」


「相変わらず、会長はテンション高いな」


「通常運転だろ」


「まあな」


「よっしゃ、どこからかまわるか」


「そうだな」


 ずっとここにいるのもアレということで俺たちは担当の時間まで見てまわることにした。なんかめっちゃ注目されてる気がするんだけど…気のせい…ではないな。二人がイケメンだからな。


「うおっここのクラスなんかやってるぞ」


「なんだ?」


「大食い競争だって!行ってみようぜ」


「嫌だよ。まだ始まって10分しか経ってねーし。お腹空いてねーよ」


「あー俺もパスー」


「ええ!?いいじゃんか」


 コイツ、大和正気か?まだ9時にもなってないのに大食い競争とか。それにしてもこれ高校生が文化祭でやる企画じゃねーんだよな。あ、思い出した。去年の文化祭のやつ。ラーメンの大食い競争だ。


「お前、去年のこと忘れたのか?」


「あ…や、やめよー」


 そうだ。去年俺たちはラーメンの大食い競争を文化祭開始から10分でやった。そして悪夢に続く……

 もう思い出したくもない。


「じゃ、じゃあ別のところに行こうぜ」


「ああ」


「何があったっけ?」


「まあ、一通りまわろうぜ」


「そうだな」


 それから俺たちは色んな場所を見てまわった。縁日、フォトスポット、迷路、お化け屋敷、コスプレ…コスプレで大和が女装したのは超笑った。でもなんか可愛かった。周りにいた女子がキャーキャー言ってたしな。

 半分くらいまわった頃、高木がふと思い出したように声をかけてきた。


「お前、柊のステージの時間は大丈夫なのか?」


「あっ!やべ、そろそろ時間だ。俺、行くわ」


「お。俺も一緒に行くぜ」


「んじゃ俺も行く」


 柊のステージまであと10分になっていたので小走りで広場に向かう。

 柊、どんな衣装してんだろうなぁ。ミニスカ…とかって俺ええええええ!ま、まあ柊は可愛いし。あ、友達と出るって言ってな。誰なんだろ。てか、二人共ついてくるんだな。


「ひ、人多いな」


「そうだな」


『では次はPIONEの皆さんによるパフォーマンスですっ!出演者はー柊志乃、上田葵……』


 !?上田さんも出るのか!?…そういうことか、高木。キメ顔でウインクしてくる友に苦笑いする。


「みっんなー!文化祭楽しんでますかー?」


 柊!盛り上がっていくぜえええええええええ




 

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