第2話 文化祭の準備
文化祭の出し物の締め切りが近づいているということで放課後に出し物について話し合うことになった。うちのクラスはメイド喫茶をすることになった。その後も着々と決まっていき、明日から準備することになり今日は解散することになった。
「よおっ、よかったな。早く終わって。お前、いっつも急いで帰るじゃーねか」
「まあな。色々やることがあるんでな。お前とは違ってな」
「俺を暇人扱いするんじゃねーよっ」
「いや、お前暇だろ。今日の予定は?」
「もちろん、
「ここでのろけんな」
「あのなぁ、お前。彼女いねーからってそう僻むなよ」
「お、おれはっ。べっ、別に彼女はっ」
「ふーん?」
「含みのある顔をやめろっ」
こいつは
「大和ー!帰ろーよー」
「おうっ」
「あれー?
「おっす」
おい、何で近づいてくるんだ。さっさと帰ってくれ。俺の前でいちゃつくのはやめてくれっ。
沙代は、ギャルだ。髪を金髪にして、ピアスを開けているしスカート丈は見えてしまうんじゃないかと言うほど短く、胸元も第二ボタンまで開いている。そして美少女だ。モテるにはモテるが、格好ゆえに怖いと思ってしまうのか話しかけるには勇気がいるらしい。でも話してみたら全然違ったというのがほとんどの人の感想だ。誰にでも気さくに話しかけるし、ギャグも言える。ギャルの格好はアニメの影響を受けたらしい。
「よっ!元気してたー?」
「元気してたー?って昨日会ったばっかじゃねーか」
「おおっ、今日もツッコミのキレが良いねー」
「まあな、毎日誰かさんのせいで鍛えられてるんだよな」
「じゃあ、その人に感謝しなきゃだねっ。ケーキ、奢っとくんだよ?」
「ナチュラルに俺にケーキ奢らせようとすんなっ。俺の財布を破産させるきか」
「あはははは」
本当に俺はもう帰りたいんだが…こいつら2人と話してるとなかなか帰れない。あともうちょっとあともうちょっとだけと言っているうちに何時間も経っていたなんてよくあることだ。
「じゃ、俺は帰るから」
「え、もう帰るの〜?」
「誰かさん達みたいに暇じゃないんでな」
「まぁ、仕方ない。返してあげよう」
「何でお前の許可がいるんだ」
「おいおい、沙代の許可は大事だぞ?」
「お前は話に入ってくんなっ」
「俺の彼女だぞ!沙代は可愛くて賢くて…」
「ああああああーもう、わかったから。じゃな」
「おう、また明日な〜」
「バッバーイ」
これからイチャイチャと仲良く帰るであろう2人を残して教室を出た。あの2人といると楽しいけど、疲れる。そのまま廊下を渡り、昇降口に向かった。みんな文化祭の準備で忙しいのか、まだ帰っている人は少ない。俺が、靴を履き替えようと靴に手を伸ばした時、呼び止められた。
「楠くん!やっと見つけた〜」
「柊?」
「あ、えっとね。文化祭のことなんだけど…あ、明日の買い出し!一緒に行かない!?」
「買い出し?」
「そう、さっき決めたのを早めに買って領収書を出さなくちゃいけないらしくて…」
おおおっ!誘われちまったああ!めっちゃ嬉しい!絶対行きたい!でも、でも…
「な、なんで俺となんだ?」
「え、それはえっとその。えーと、荷物持ちには男の子がいいなーって思って、あとえっと……駄目…かな?」
「いいや、ぜんっぜん!」
「それならよかったーじゃあ、また明日!」
「また明日」
うっひょーい!明日は一緒に買い出しだ!もしかするとこれってデ、デート…というやつなのでは?放課後デート!わーい
*****
「ただいまー」
「遅い」
「ごめん。今、夜ご飯の準備するから」
マンションの一部屋。俺は去年から義理の妹と暮らしている。母親は小さい頃に病気で亡くなり、父親はやっと新しい人生をもう一度進み直すといって再婚を決心した。相手の女性も旦那さんを病気で亡くしたらしく、そのことも分かった上で再婚しようと言うことになったらしい。その母親が連れてきた妹は初め、やや反抗気味で毒舌だった。だから初めは扱いに困ったが、今はだんだんと心を開いてきてくれた、と思う。両親はというと今は2人で海外に行っている。義理の母親の仕事が世界を飛び回らなければならないものらしい。2人の時間を大切にしたいからと言って俺の父親もついていった。だから今は実質2人暮らしだ。
「今日は何がいい?」
「おにぃの好きなもの」
「お前、いっつもそれだろ。たまにはお前の食べたいものを作る」
「じゃあ、オムライス」
「了解。とびきりふわっふわのオムライス作ってやるよ」
「うん」
それから俺たちはオムライスを食べた。美味しそうに食べてくれたのでこちらとしてはとても嬉しかった。俺が食器を片付けている間、義妹はひたすらスマホを真剣に眺めていた。片付け終わったので、義妹の近くのソファに座ってスマホを覗き込んだ。
『好きな人の落とし方』
なんだとおおお!好きな人落とし方だとおっ!めっちゃ知りたい!俺は柊にかっこいいところを見せて好きになってもらいたいと思っていたが、まさか他にも秘訣が!?
「なぁ、ちょっとその記事見せてくれないか?」
「うわああああ!お、おにい?」
「めちゃくちゃ熱心にみてたんだな。その記事見せてくれよ」
「え、お、おにぃ、好きな人いるの?」
「イ、イナイヨ」
「いや、おにぃ。嘘下手か」
「まぁ、それは別にいいだろっ。とりあえず見せろよ」
「いやだよっ。おにぃが本当のこと話すまで見せてあげないっ」
仕方ない。話すしかないか。それから俺は義妹に俺が思っていること、今までしてきたこと、これからどうする予定なのかなど一通り全部話した。
「いや、相手絶対おにぃのこと好きじゃん」
「ん?何か言ったか?テレビの音が大きすぎて聞こえなかった」
義妹はたまにボソボソ話すからなぁ。はっきり喋って欲しいんだが。それとも俺の周りにハキハキして奴が多すぎるのか?
「ごほん、と、とりあえず。おにぃの言いたいことはわかった」
「そうか。で、これから俺はどうしたら良い?」
「ぶっちゃけ言って、おにぃ。キモイ」
はっ?キモっ?何でだ?どう言うことだよっ
「はぁ。毎日毎日、彼氏でもないのに生徒会室に通って。手作りクッキーまでせがんでさぁ」
「おかしいか?」
「おかしいよっ」
「や、やめたほうがいいか?」
「うん。…よしっ。これでライバルが1人は減った。おにぃは私のだもん」
そうか。やめたほうがいいのか。じゃあ、どうすればいいんだ?
「そっれっに!おにぃ、私は麻衣‼︎名前で呼んでよ」
「お、おう。でも義妹になったとはいえ、一つ下なだけじゃねーか」
「いいじゃんっ」
「ダメとは言ってないけど」
「じゃあ、決まりー」
無理やり決まってしまった。別に麻衣のことを名前で呼ぶのが嫌と言うわけではない。ただ、なんとなく違和感があるだけだ。さっきも言った通り、義妹になったとはいえ一個下の高校一年生だし、ついこの前まで触んないでと言われていたザマだ。そう簡単に直るわけがない。まぁ、でも呼んで欲しいって言うなら呼んであげないこともないがな。
「じゃあね、おにぃ。私もう寝るから」
「もう寝るのか?早くないか?」
「はやくなーい、はやくなーい」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさーい」
それからしばらくしてガチャリ、と部屋の鍵がかかる音がした。その音を確認してから俺も自分の部屋に戻った。…麻衣も寝てしまった。さて、俺も寝るか。明日は柊と買い出しだ!
それから夢で今日見たホラー映画が頭に蘇り、叫んで麻衣に迷惑をかけたのはまた別のお話。
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