第10話 真実

 結局、陽一は入院して三日目に退院することになった。


 退院当日、あの高崎と言う弁護士がやって来た。

 花束を持って。


「退院おめでとう」

「・・・どうも・・・」


 この弁護士は、何かを言いたげなのだがなかなか言い出さない。

 もっとも、なんとなくわかる。


 この弁護士は、純子の父親を担当していたと聞いた。

 あの事件のことを聞きたいのだろう。


「あ・・・」

「?」

「ちゃんと夜は眠れてるかい?」


 なぜか、そんなことを聞いてくる。


「いえ・・・」


 相変わらず、眠れない。

 睡眠不足は、良い面もある。

 感情が希薄になっていくのだ。


「そうか・・・」

「・・・裁判は大丈夫ですか?」


 そう聞くと、高橋弁護士はゆっくり笑顔を見せてくる。

 でも、その表情は泣きそうに見える。


「大丈夫さ。協力してくれてありがとう」


 そう言うと、椅子から立ち上がる。


「そろそろ、おいとまするね。ありがとう」




 その背に、陽一は声をかける。


「一応、ひとつだけちゃんと言っておきたいことがあります」

「・・・?」


 振り向く高崎弁護士は不思議そうに振り返る。


「Aさんは、間違いなく旦那さんのことを・・・****************」


 それを聞いた高崎主任。驚いた顔。

 どうやら、わかっていなかったらしい。

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