第9話 まーだだよ
目が覚めると、見たことの無い部屋の白い天井。
ベッドの周りのカーテンで、ここが病院だと理解する。
腕には点滴。
この点滴で、僕は生かされてしまった。
そうか
死ねなかったのか。
いろいろ自殺を試みた。
餓死か脱水症状で死ぬことができると思ったのだけどな。
すぐに母親が駆け付けてくれた。
だが、腫物に触るような対応。
そうだよね、どう扱っていいかわからないよね。
迷惑をかけていることは分かっている。
午後になって、あの弁護士がやって来た。
「やぁ、少しは顔色が良くなったようだね。」
「・・・・」
「君のおかげで、あの事件の真相が分かって来たよ。ありがとう」
「・・・これで、奥さん・・・Aさんの裁判は大丈夫ですね」
すると、高崎弁護士は首を横に振った。
「いやいや、大変なのはこれからだよ」
「・・・・」
「証拠集め。そのための情報公開要求。証人探し。まだまだ、これからが大変なところだ」
「・・・・血液検査の結果だけではだめなんですか・・・」
「あぁ、裁判官や裁判員に納得してもらうには、ちゃんと物証をそろえて論理的なロジックを組み立てて理解できるように説明しないとね」
「・・・そうですか」
「弁護士の仕事は、犯人を見つけてめでたしめでたしにはならないからね」
チクリ・・・
心臓を棘が刺す・
「じゃあ、お大事にね。気が向いたら裁判の傍聴に来てくれ」
「・・・はい」
僕のやって来たことは何だったのだろう。
犯人捜しのおままごと?
その後、証人探しや証拠探しが大変だったのだろうか。
それは警察の人任せだった。
あの高崎と言う人は、どうやって証拠を集めるのだろう・・・
そして、裁判の結果は?
陽一の思考として、”死ぬ”以外の思いが浮かんできたのほ久しぶりであった。
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