第6話 弁護士
「・・・それを聞かせてどうしろと・・・
真犯人を見つけろと言うつもりなんですか?」
小さくつぶやくような声。
しかしながら、その声の奥には激しい怒り。
この少年も、あの事件によって心に深い傷を負ったのだろう。
高崎は、少年に共感を感じていた。。
「いや、犯人は・・Aさんで間違いないだろう。
物証も、自供もおかしいところは無い」
「・・・では、僕にできることは無いです」
高崎は、持っていた書類をテーブルに置いた。
「私は、弁護士だ。弁護士の仕事は、犯人を見つけることではないよ。
依頼人の無実を証明するなんて仕事はまず無いんだ」
テーブルの上のペットボトルの水を手に取り、一口飲む。
「弁護士の仕事は、犯人が逮捕された後に始まる。
依頼人に代わって、状況や事実を整理して裁判官や訴訟相手に説明することで依頼人を守り・・・助けることが仕事なんだ」
高崎は、2か月前の案件を思い浮かべながら話している。
”今度こそは…”
「彼女は、確かに殺人を犯したのだろう。だが、その背景や理由を裁判官や裁判員に伝えることで、彼女のことを正しく理解してもらいたい」
”今度こそは…”
「私は、依頼人を守り・・・助けたいんだ」
”守りたい”
陽一の胸に、チクリとその言葉が棘のように刺さった。
”守り・・・助ける”
僕は、純子を守れなかった・・・
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