第5話 独り言

「この案件は刑事事件。容疑は殺人。依頼人は、仮にAさんとする」


 5月☓日

 Aさん本人から”夫を殺した”と、110番通報があった。

 警察が、Aさんの自宅に駆けつけるとAさん本人が出迎える。


 寝室のベッドの上には、被害者であるAさんの配偶者のBさんが胸を刺されて死亡していた。

 検死の結果、死後5日経っていたと判明。

 凶器である包丁はBさんの隣に置いてあった。凶器からはAさんの指紋が検出されている。


 本人の自供もあり、凶器などの物証からもAさんの容疑は間違いないとされている。

 ただ、その後Aさんは詳細については黙秘を続けている。



 そこまで話した時、高崎は向かいに座っている陽一の手が小さく震えている事に気がついた。


 陽一は、うつむいたままである。

 表情はわからない。


 だが、ここに来て初めて声を発した。


 無愛想に・・・


「・・・それを聞かせてどうしろと・・・

 真犯人を見つけろと言うつもりなんですか?」


 小さくつぶやくような声。

 しかしながら、高崎はその声に激しい怒りの感情を感じとった。

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