第3話 悪夢

 一瞬、意識が途切れた。

 意識が、暗い闇に包まれる。


 その瞬間、純子の泣き顔がフラッシュバックしてきた。


「いやああ!!おとうさん!!どうして!?どうしてなの!?」


 悲鳴に近い叫び。

 泣き叫ぶ純子。


 その瞬間。意識が覚醒する。


 この繰り返しだ。

 この2か月間、全く寝ていない。

 だが、意識を失う間隔はだんだん短くなってきている気がする。



 何度も・・・・何度も。

 脳裏によみがえる純子の泣き叫ぶ顔。

 でも、その原因は僕なんだ。


 僕は、何もできなかった。

 硬直して・・・声を上げることもできなかった。



 いままで推理してきたのは、ただ・・・ただ純子に”すごい!”って褒められたかっただけなんだ。

 純子の笑顔が見たかっただけなんだ。


 なのに、なぜこんなことになってしまったのか。


 


 脳裏に浮かぶ、泣き叫ぶ声。

 何度も・・・何度も・・・繰り返し思い出す。




 その後・・・純子に会うことはできなかった。

 純子が死んだのも・・僕のせい。

 看取ることも、葬式に出ることも許されなかった。

 それは、でも僕の自業自得。



 僕に、もう生きている価値なんかない。

 何が正義だ・・・

 もう、うんざりだ。



 あれ以来、何も食べていない。

 もうそろそろ体力も限界だ。


 もうじき、僕は死ぬ。

 そうすれば、この地獄も終わるだろう。


 それでも、早く死のうと思って、海に来た。

 そしたら、この人に連れてこられてしまった。


 でも、もう真夜中。

 この人が寝てしまったら、ここを出て行こう。



 遅かれ早かれ、死ぬことになるんだ。

 それならば、早い方がいい。

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