苦い思い出
私は大切だと思った相手にはできるかぎり誠実でいたいと考えている。
勿論それは単なる理想論の域は出ないので至らない点が多々あるのは不徳の致すところだ。
しかし私のこの信条は時に自分の首を絞めることがある。
それは相手が私に対して「こいつは自分に恋愛感情を持っているに違いない!」と勘違いして無駄にガードをかためられ、最終的に何故か友達として大切に思っているだけのつもりの私が振られるという現象が起こるのだ。
単純に私の感情が何をもとにしたものでも重すぎるというのが一番の問題なのだろうが、この匙加減が全くできないのが私という人間である。
悩んでれば相談に乗りたいし、死ぬかも知れないなんて聞いたら死んでほしくないと思う(自分が希死念慮を持っているのに矛盾があると思われるかも知れないが私の命と他者の命は全然違う話なのでここは矛盾がないとさせていただく)。
そういう事を素直に伝えていると「あぁ、こんなに心配するのは自分のことが好きだからなのね」となってパワーバランスは一気にバグを起こす。
ここで語らせていただくのは友達の紹介でメールのやりとりをして実際に対面した相手との顛末である。
突然だが私は同性愛者だ。
今はLGBTという言葉も浸透して珍しいこととは思われなくなっているかも知れない。
でも今から話すのはもう十数年前の話なので、気軽に自分のセクシャリティを語らえる世の中とは言い難かった。
出会いもない日々を無為に過ごしている自分を友人が気にしたのか、高校の同級生を紹介したいと持ちかけてきた。
友達に一切カミングアウトはしていなかったので紹介されたのは勿論異性。
その頃は自らを同性愛者であると淡く認識しつつも確信は持てておらず、友人からは付き合えば?みたいなノリではなくオタク趣味が合いそうだから取り敢えず連絡してみてよ的な話だったので特に断る理由も無く連絡を取り始めたのだった。
私はその頃既にメンヘラモードMAXで、前回書いたように外見なども貶され続けて生きてきたので付き合うとかそういう以前に実際に会ったらドン引きされるのではないかとそれが怖くて仕方がなかったのだが、聡明な友人はそこは抜かりなく私のメンタルの話もしていて全く垢抜けていない学生時代の私の写真も見せた上で話してみたいかを確認しているから問題ないということだった。
実際メールのやり取りをすると特にガツガツした感じでもなかったし、メル友として私達はとても上手くいっていたのだと思う。
メールで仲良くなるにつれて自分を曝け出して話をしてくれるのは嬉しいと思ったし、この先長く仲良くしていければ良いなとも思った。
そのまま結局フェードアウトしていったという話ならまあ良い思い出の一つかな?という感じになっただろう。
しかしその後、私たちは実際に会ってしまった。
人見知りな自分のために友人が付き添ってくれて3人で初対面を果たす。
あの時観た映画は「スターウォーズ」だったっけ?
ご飯を食べたりカラオケに行ったり。
友達と遊ぶ時の定番を詰め込んだその日は楽しかったと思う。
ただ気になったことがあった。
相手が本当不自然なほど私を見ないのだ。
そんなに目にも入れたく無いほどに私は醜いのだろうか?
ここで私の外見コンプレックスがキシキシと音を上げ始める。
それでなくとも何か私に対して思うところがあるのだろうかと嫌な予感が頭を離れない。
翌日、2人だけで遊ぶことになっていた。
当日になって昨日の私が感じたことは気のせいではなかったと確信した。
顔を見ないどころじゃない。
終始その様子は落ち着きなく、私と過ごす時間を全く楽しんでいない。
街を歩いて少し疲れて。
本当だったらお茶を飲みながら休憩するためにカフェに入りたいと思ったけれど、お茶をしようと伝えたら自動販売機で買ったお茶をベンチに座って飲んで終わりだったからその嫌がりようがよっぽどだと伝わるのではないだろうか。
誤解がないように書いておくと前日同じようなシチュエーションになった際には小洒落たカフェに入ったことからするに余程私と時間を共にするのが苦痛だったと見える。
全く盛り上がらない会話を元々口下手な私が仕切ろうとすればするほどその場の空気は冷たくなっていく。
結局何故私は今ここにいるんだろうと終始考えさせられたままその日は終了した。
迎えに来てもらっているからと言ったその人は、迎えの車を見つけるとさよならも言わずに走って行ってしまった。
なんでこんな目に遭わなきゃいけないか本当に分からなくて消えたくなりながら、でもそのまま帰るのは時間をただ無駄にしたみたいで嫌すぎてヴィレッジヴァンガードで丸尾末広先生の漫画をいっぺんに4、5冊買って帰ったのを今も覚えている。
後にあまりに悲しすぎたので抗議の意味も込めてメールをしたら、いつもあまりに熱心にメールを返してくるから自分のことを好きなんだと思ったから優しくしたら勘違いされるかと思ってあんな態度になったと言われた。
メールは相手に合わせて返していただけで別に好きと書いた訳でもあるまいし、そもそもそんなに私から好かれてるかも知れないことが悍ましいと思ったなら2回目会う必要性を全く感じない。
どちらにとっても単なる時間の無駄だ。
それがあまりにも腹立たしくてメンヘラ丸出しのおどろおどろしい返信をしてメールの着信拒否をしたので、もしかしたら相手は暫くメンヘラにトラウマを持ったかも知れないね。
まあ私もこれに懲りたら良いのにこんな経験がこの件だけじゃないのが悲しい話だ。
でもこんな目には遭っているけど、私は大切な人に全力で接することはやめられないと思う。
ここで語るの全力で接する相手がちょっと仲良くなった人は含まず“大切な人”だけになったのはほんの少しの私の成長なのかも知れない。
誰とでもお互い同じ熱量を相手に向けあえる関係でありたい。
それは誰のことも大切に〜という意味では決してなく、大切な人は大切にそうでない人はそれなりにのスタンスでいたいということである。
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