「好きだよ。」

私は、その日、歩くのもままならない中、

なんとか家着きに圭に泣きながら電話した。


「雄也くんに浮気された」


俺はスマホの向こうで泣いている旭を放っておけなくて家を飛び出た。


旭の家のチャイムを鳴らす。


出てきた旭は目を真っ赤にしてさっきよりも震えた声で泣いていた。


詳しい話を聞くとどうやら岸田と陽菜が手を繋いで岸田の家の方向に歩いていくところを見たらしい。


俺はすぐにでも岸田を殴りに行こうとしたが、

それでは何の解決にもならないと我に返り、岸田と話し合うことにした。


旭の精神的にもその日は帰り、


1週間後、岸田を近くの公園に呼び出した。



俺は早速本題に入ることにした。


「おい、陽菜と手を繋いで歩いていたって旭が言ってるが、どういうことだ」


岸田は表情全く変えずに


「別にお前は関係ないだろ」


…は?関係なくないだろ。


俺は殴りたい衝動に駆られたが、なんとか抑えた。


「何が関係ない、だよ、昔からの幼馴染が俺に助けを求めてるんだぞ」


岸田は何かを言い返すことも、表情を変えることもしなかった。


「おい、なんか言うことないのか?」


岸田は微動だにせず、


「すまなかった。」


何が旭の事を傷付けておいて、すまなかった。だ、ふざけるな。


ついに俺の手が出た。


やつの右頬を俺の手が殴る


「本当に旭の彼氏かよ、旭の気持ちを考えたことあるのかよ、どんだけ悩んで、どんだけ泣いて、どんだけ傷付けられても、まだ好きだって言ってんだぞ、そのこと少しはわかってやろうと思わないのか」


やつは俯いたまま、赤くなった頬を抑えて固まっていた。


俺はもう一度殴ろうとした。


だけど俺は殴れなかった。


やつの頬に涙が伝っていた。




そんな日からしばらく経った今日、卒業式を迎えた。


家の前で桜が落ちるのを見ていた。


玄関から少女出てくる。


制服姿で、短くなった黒髪の少女がそこにはいた。


以前とは違って自信と笑顔に満ちた顔にはこの前のことなど関係ないと言うことが伝わるほど彼女の目は輝いていた。


彼女の手を取り、俺たちは通学路を進む。


普段歩いているはずの通学路を進む足の1歩1歩がいつもよりまして重く感じる、少女と少しでも長く居たいという思いがあったからだと思う。


学校につくと隣のクラスだった俺たちは別々の教室に足を運んだ。


教室につくと、クラスの皆が、今日で最後となる教室での思いを黒板に残していった。


俺はなんかその輪に入るのが恥ずかしくて、教室の端っこで眺めていた。

(ちなみに寄せ書きはクラスの誰にも書いてもらってなくて、1人と交換で書いただけだった)


しばらく時間があったので小説を書きながら、教室で待機してると放送が流れてくる。


「卒業生の皆さんは体育館に移動してください。」


その放送を合図に3年生が廊下へと出る。


1組から順々に体育館へ移動する。


入場が始まった、この時が1番緊張していたと思う。校歌を歌い、校長先生の話を聞く。


いつもは長ったらしくて寝てたけど今日はありがたかった。


そして卒業証書授与に入る、皆が受け取るのを見ていると、すぐに俺の番が来た。今度はコケないでステージに上がれた。


卒業証書を受け取り、お辞儀をする。



卒業式は終わり、少女とした約束の校舎の裏にある桜の木の下で、少女待つ、その少女はやはり5分遅れてやってきた。


今朝会ったばかりなのに、数ヶ月会っていないかのように感じるほど、少女が来るのが待ち遠しかった。


何故かいつもより何倍も可愛いく見えた。少女、旭と話し始める。


「懐かしいねこの桜、入学式の日もここで話してたっけ。」


「ああ、あの時は旭、泣いてたけどな。」


「そんなこと言わないで!今日は泣いてないでしょ!あの時は緊張してたの!」


「ごめんごめん、でも今日は泣かないんだな。」


「だって圭と同じ大学に行けるから寂しくないもん。」


あぁ、やっぱり俺の彼女は可愛いな。


前までの勇気がなくてヘタレな俺は絶対言えなかったけど、今なら言える。


「旭」


「圭どうしたの?」


「好きだよ。」

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