「やめとけよ」

「あんなやつのどこがいいんだろうな」

自然と口から独り言が漏れていた。


俺の幼馴染の旭は隣のクラスのやつが好きらしい。


どうやら旭は1年の頃に同じクラスで、その時にそいつと仲良くなったらしい。


その頃からずっと好きだと旭は言っていた。


幼稚園の頃から好きだった、俺は中学の頃に告白しようとしていた。


だけどこの関係が終わるのが怖くてずっと告白出来なかった。


そして時は過ぎ。


中学を卒業して。


今はもう高校2年生になってしまった。


高校に入ってから旭と話すことも少なくなった。


たまに友達と水族館に遊びに行っただとかそんなLINEが来るくらい。


中学の時みたいに部活帰りに旭の家で晩御飯をご馳走になったり。


隣町まで旭の買い物に付き合わされたりすることはもうほとんどない。


去年までは好きなやつらしき人と一緒に帰ってる後ろ姿を見るくらいだ。


もう少し俺に勇気があれば一緒に帰るのは俺だったのかもしれないな。


そんなことを考えていて、俺は今週にあるテストの課題を解く手が止まっていた。


そんな時、LINEの通知音がなった。


どうやら通知を切るのを忘れていたらしい。


課題に集中出来てなかったから良かったんだが。


俺は無視して課題を再開しようとした。


また、通知がなった。


しょうがなく俺はスマホを手に取って、LINEの内容を確認する。


「けー!聞いて!」

「私、彼に告白しようと思う!!」


どうやら通知の正体は旭だったらしい。


非常にまずいことになった。


どうやら旭はとうとうやつに告白するらしい。


非常にまずい。


とりあえず落ち着こう。


見間違えかもしれない。


もう一度確認した。


だけどやっぱり画面には同じメッセージが表示されていた。


どうやら課題なんかしてる場合じゃないらしい。


旭がやつと付き合うなんてことがあってたまるか、俺はすぐさま止めようとした。


でも、俺に止める資格がないことはわかっていた。


小4から好きだったのに7年間告白出来ずにいたやつに、その人の告白しようとする勇気を否定することが出来るか。


それに好きな人が幸せになろうとしているんだ。


そんな幸せなことを止めるなんてそんなこと許されるわけが無い。


だけど、俺は心から応援出来ない。


なぜなら、旭の好きなやつ。


そいつが問題なのだ。


あいつは部活のない日は旭と一緒に帰って居るが、

(なぜ知ってるって?俺がストーカーな訳じゃなく、俺が帰宅部で帰る時間が一緒だし、家が旭と同じ方向だからよく見るだけだ、決してストーカーでは無い)


部活のある日は別の女子と手を繋いで帰ってるのを見たって。


同じクラスのやつが言っていた。


それならまだしも別のやつとも手を繋いで帰っていたらしい。


そんなやつ信用出来ない。


旭と1人で旭を育ててくれて、俺も沢山お世話になった旭のお母さんのためにも、俺は告白を止めようとそう誓った。


旭に告白する日を聞いたところ今週の日曜日らしい。


俺は

「土曜日暇なら久しぶりにメシ行こ」

「詳しく聞きたい」

と送った。


話を聞くつもりは全くなかったけど、上手い理由がなかったからそういうことにした。


課題を終わらせないと、ただでさえ赤点ばかりの俺は、進学が危ういので俺はさっさと終わらせることにした。



そして、問題の土曜日が来た。


テストについては聞かないで欲しい。(次の週に帰ってきたが悲惨だった。言葉で表したくない。)


テストなんてどうでもいい。


今日はそんなことより旭のことの方が大切だ。


旭とは学校と同じ町にあるカフェで会うことにした。俺は時間ピッタリに着いた。


5分ほど待っていると旭がゆったり歩いてきた。(朝日はいつも待ち合わせに5分遅れる、中学の頃からずっとだ。)


久しぶりに私服の旭を見た。


白ティーにグレーのカーディガン(名前が分からなかったけど、旭に後で聞いた)。


白のサラサラした長いスカート(こっちは聞きそびれた)とロングの黒髪。


正直可愛かった。


多分好きだからじゃなくて誰が見ても可愛いと思う。


そんなこと考えてる場合じゃなかった。


俺と旭はカフェに入る。


俺はガトーショコラ。


旭はパンケーキを頼んだ。


ガトーショコラを口に運んだが不思議なことに味がしなかった。


(自分でも思わないほど緊張していたんだと思う。)旭は

「おいしい!けーも食べる?」

と言っていたけど、どうせ味はしないし貰わなかった。


(決して恥ずかしくて断ったわけじゃない)

そうそう、旭の好きなやつの話だった。


まずは敵の情報を探るべきだと思い聞くことにした。(旭には話を聞くっていう体で呼んだから不自然なところはない)


「そういえばそいつってどんなところがいいの?」

「えー?岸田くん?声がいいとこと…」

(俺の心にワンヒット)

「歌が上手いところと…」

(俺の心にツーヒット)

「勉強が出来て頭のいい所かな。」

(KO!カンカンカン!

試合終了のゴングが鳴った)


やばい、俺に勝ち目なくね?声は褒められたことないし。


歌もお世辞にも上手いと言えない。


それにテストの点数は…。


いや、今日は告白を辞めさせに来ただけだ。別にやつと戦いに来たわけじゃない。


切り替えよう。


「なるほどなー、そんなにそいつがいいんだ。」


「うん、だってね、彼が、旭と話してると本当に時間忘れちゃうくらい楽しい、こんなに一緒にいたいなんて思えたの旭だけだよ。って言ってくれたの。」


旭の顔が赤みを帯び、誰からでもやつのことが大好きだってことが分かるくらい照れていた。


俺と一緒にいる時には見せたことない顔だ。


本当に悔しかった。


本当は


「やめとけ」その一言を言いに来たのに言えなかった。


いや。


言うことが出来なかった。


だってこんなに幸せそうな旭の事邪魔できるわけないじゃないか。


その後の会話のことはほとんど覚えていない。


帰り道、熱いものが頬を伝い、前が見えなかった。


1ヶ月学校に行くことが出来なかった。


だが、俺が旭を止めなかったことを


1年後、更に後悔することになる。


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