第14話2.14 閑話 弟妹たちの買い物
兄さんたちと別れた私とサーヤは、とある若者向けの服屋に来ていた。
「この服、シェールねぇに似合うと思うです」
「そうかしら? こんなかわいい感じのは、サーヤの方が似合いそうだけど」
「そんなことないです。シェールねぇは、もっとかわいいの着るべきです。そしたら分かるです」
本当かしらと思いながらサーヤが手に持っている服を改めて見る。
装飾過剰でふわふわしていて見る分にはかわいい服だけど、私の趣味には合わない服だった。
そもそも、私はあまり服に興味がない。普段は、ほとんどローブを着ているから、その下の服を見られることも無いし、こんなことする時間があるなら理術の本でも読んでいたいところだ。
けど今回ばかりは、そうも言ってられない。ウィレさんからお願いされてしまったから。新しい服を買って来て見せてと。
いや本当はウィレさんに用意されていたのだ。私のための服が。だけど、その服は機能的な問題で着られなかった。なにしろ出てくる服全てドレスだったから。
カジュアルドレス、イブニングドレス、カクテルドレス、他にも私が見た事ないような『振袖』とか『漢服』とかいう民族衣装まで、とても普段着られなさそうな服だった。
だから申し訳ないけど、『ごめんなさい』した。
「それじゃあ、こっちです?」
私が昨晩のやり取りを思い出していると、サーヤがさっきより幾分ましな服を持ってきている。それでも、やっぱりサーヤの方が似合いそうな服だった。
「どのような服をお探しですか?」
困っていると店のお姉さんが、声を掛けてくれた。
「なるべくシンプルな服が良いです」
唯一の要望を伝える私。すると。
「それでしたら――」
と、いくつか候補を持ってきてくれるお姉さん。
選んで持ってきてくれた服は流石の選択でした。ワンポイントの刺繍がされている白のブラウスに、ひざ下ぐらいまでの丈のスカートのセットやほんのり青く染められたブラウスに細身のパンツのセット、他にも薄手の革で作られたコートや手袋まで。即座に。
「全部で、おいくらですか」
と聞いてしまう品々でした。
サーヤまでが、シェールねぇに、すごく似合うです~、と喜んでくれているぐらいに。
「全部で、60万ブロになります。端数は負けておきます~」
店のお姉さんに勧められるままに服を選んだ結果、この金額となった。もちろんサーヤが勧めてくれた服も買っている。
サーヤ用として。
「シェールねぇ、凄い金額だね」
「そうね、母さんに、ばれたら叱られそうな額ね」
二人で向き合って笑いあう。私の笑いは苦笑だけど。
「でも、まだ服だけです。あと、下着と靴とアクセサリーと買うもの沢山です~」
「えー、でももう60万ブロも、普通の農家の年収ぐらい買ったのよ。いくらウィレさんが予算無制限と言っても限度があると思うのだけど」
「大丈夫です~。メイド長のホリーさんがこっそり目安の金額教えてくれたです」
言いつつ耳元に口を寄せて耳元で囁くサーヤ。
「白金までです」
その金額に私は目を見開いた。白金という事は1000万ブロ、以前ちらっと聞いた父さんの半年分の給料――――金銭感覚が壊れそうだった。
――
アルにぃと、シェールと、離れた俺はユーヤにぃと商店街をぶらついていた。
「なぁ、ユーヤにぃ、何か買いたいものある~?」
さっき露店で買った串焼きをかじりながらユーヤにぃに聞く。けどユーヤにぃは首を横に振るだけだった。
「そうだよなぁ。何にもないよなぁ。武器も防具もアルにぃの作ってくれたやつがあるし、ご飯も腹いっぱい食べれるし、お菓子まであるんだもんなぁ。家とはえらい違いだ」
うんうん頷くユーヤにぃと共に歩きながら店を見ていく。
確かに商店街は珍しいし、人も多いし、バーグ属領では見た事ない物も売っている。
でも、わざわざ買おうと思うものは何もない。ただ見るだけだ。
昼ご飯を腹いっぱい食べたから腹も空いていない。串焼きだけは食べたけど……。
「飽きた……城に帰って模擬戦したいな」
「む!」
頷くユーヤにぃ、それいいな、って言っている。
俺達は早々にラークレイン城の訓練場へと戻った。
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