第8話

道路を抜け、海辺を通り過ぎ、階段を駆け上がり、神社の鳥居を抜けた。

神殿の奥、人目につかなそうなところに拓斗はいた。


「彩佳を返せ」

僕の感情は誰にも分かりえない。憎悪を超えた、何かに支配されている。

「もう返したさ」

彼はスコップを指さした。

僕は土を掘り返した。

「馬鹿馬鹿しい」

拓斗はまた鼻で笑った。


僕は一心不乱に拓斗を殴った。

殴り続けた。


どうして、どうして、大切な人を2人も失わなければならないのか、

彼女のような存在は2度と現れることはないかもしれない。


拓斗は地面に血まみれになって横たわり頬の筋肉を緩ませた。

「愛って何か知ってるか?」

「なんだ」

「拘束だよ」

「は?」

「その人を自分の手で拘束したいと思う欲。誰にだってあるさ。お前にも。」


彼女の笑顔はもう戻らない。1発また殴る。


「俺はお前を自由にして、俺は欲を叶えた。それだけさ。こういうのなんて言うか知ってるか?」

「なんだ」

「ウィンウィンだよ」


力の限り右手に思いを込めて彼を殴った。そして神社の傍らにあった大きな石に手を伸ばした。


「結局解決できるのは復讐なのかもな」

僕はそう呟いた。そして彼の顔に石を振り落とした。


彼はもう呼吸がほぼなくなってきていた。

僕はすぐに異変を察して来た大人たちに取り押さえられ、連行された。

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