第6話
次の日、彩佳から父との関係を詳しく聞いた。
「出会ったのは駅なの」
彼女は少しためらいながら話し始めた。
「雨の日に傘を忘れて、どうしようと思っていたら話しかけてくれたのが達哉くんのお父さんだったの。その日は傘が1つしかなかったから傘に入れてもらって家まで送ってもらった。」
僕は動揺を隠しながら相槌をうつ。
「そのあと、駅で何回も会うにつれて連絡をとるようになって、気づいたら、、」
「関係を持ってしまったということね」
僕はあの日みた手帳通りだと思い妙に納得した。
大人と高校生の女子が関係を持ってしまうことはあまり聞いたことがない。父が母という存在を考えずにこのような行為に及んだとは考えくいが、父なりに理由があったのかもしれないと思った。
母がこのことをもう知っているとしたらどう思うのだろう。
もうこの世にはいない人に人生を狂わされたのだから。
もし父がまだ生きていたらもっと大変なことになっていたのかもしれない、ということも同時に考えた。
父がいなくなってよかったと少しだけ思う自分が怖い。
父は昔から堅実な人だった。正しい道から大きく踏み外したことなんて1度もないし、それだからこそ今回の事件は父には相当罪悪感があったのだろう。
家族に迷惑がかかると考えただろうし、交通事故にあったからといって確実に自殺できるわけでもないことから考えて、贖罪の結末だととらえるのが正しいだろうと思う。
それから何週間かが不気味に経った。
あの胸騒ぎが胸騒ぎだけで終わりそうだと思っていると、現実となる事件がまた起きた。
「彩佳がいない」
そんな話は瞬く間に僕の耳に入ってきた。彼女の自殺未遂は止めたはずで、彼女なりにけじめをつけようと努力をしているのを感じていた。
それならどうしてまた失踪したのか。その疑問の答えはすぐにわかった。彼女の意思に反して姿を消しているのだと直感した。
答えはすぐに分かった。母だ。今日の午前中に買い物に行くといって帰ってきていない。
母に電話をしても出ないので、僕はすぐ警察に電話し、母の捜索願を提出した。
スーパー、薬局、あらゆるところを探しても母は見つからなかった。
父を亡くした僕が母を亡くすことになるのはどうにかして避けたかったが、自分の手ではどうにもすることができなかった。
こうやって戸惑っている間に母が彩佳に危害を加えようとしているのではないか、と不安になる。
いままで隣にいた人がいつまでも隣にいるとは限らない。
すると母から急に電話がかかってきた。
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