第4話
それは警察からの電話だった。当時目撃者はおらず防犯カメラもなかったが、脇の駐車場にあった車のドライブレコーダーに映像が残っていたそうだ。
その映像には、無理に車線の中央に自転車を動かす父の姿が映っていた。
訳が分からなった。家族を愛し、一生懸命働いていた父がなぜ自殺なんてしなければいけなかったのか。
そして拓斗がなぜあんなことを言うことができたのか。
「お母さん、心当たりとかあるの?」
母は口を開けようとしなかった。動揺しているからと片付けることができるかもしれないが、僕の目にはなにか隠し事があるようにみてとれた。
本当に嫌な予感がした。自分の知らないところで何か得体のしれない怪しいものの影が動いている気がした。
母が買い物に行っている間に、警察が来る前の父の書斎をあさった。
古びたスタンド、万年筆、椅子が残っていて、もういない父のぬくもりを感じてそこでもまた泣いた。
そして、「それ」は下の段の引き出しの奥にあった。小さな手帳が置いてあった。
動転した。その手帳には彩佳について詳しく書いてあった。
身長、体重、靴の大きさ、胸の大きさ。
怖かった。なぜ父が彩佳について知っているのか。友達の話はあまり家族ではしないし彩佳の話をした覚えはない。
手帳には日付と時刻、ホテル、部屋番号が書いてあった。
僕は部屋を飛び出した。もう何をすればいいのかわからなかった。鍵も閉めずに家を飛び出し、3人を呼んだ公園まで走った。3人で話さないと今日は寝れない気がした。
「達哉!」拓斗が叫んだ。彩佳がいない。
「どうした、そんなに走って」
「彩佳はどこだよ!」
「まだ来てない」
集合時刻からだいぶ過ぎている。血眼になって彩佳を探した。
理由はわからないが拓斗が案外はやくに見つけた。もしかしたら居場所を知っていたのかもしれない。
「灯台の上だ」
僕は自転車を飛ばし海辺に着くと自転車を放り投げ灯台に走っていった。
「来ないで!」
彩佳の叫び声が響いた。
彩佳が何をしようとしているのかすぐにわかった。僕は拓斗と説得を試みた。
やっぱり、人の命ははかない。
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