十話目 悪の組織とヒーロー

「私、ヒーローになりたいんです」

「はい?」

「いや、ですから私はヒーローになりたいんです」

「ヒーローって言うと悪役を薙ぎ倒す正義の?」

「そうです!」

「それを本気で言っていますか?」

「秘密結社のトップが何を言ってるんですか」

「まあ、それを言われてはあまり強くは言えないですね。それで、その悪である秘密結社の最高司令官の前でヒーロー宣言はちょっと引くんですが……。なぜヒーローになりたいのですか?ヒーロー志望の燈矢紅葉さん」

「はい!私は既に両親を亡くしています。その時のお話なのですが……。実は私、その時見てたのですよ」

「見ていた?」

「ええ、両親が私達を助けるために必死に抵抗しているところを」

「それで、まだ小学生だった私には警察を呼ぶことしか出来なくて」

「まあ、それでも十分出来ていますね」

「全然です!あの時私が……私が立ち向かえる強さと勇気があれば」

……。

「まあ、過去は過去です。振り返ったとしても戻ってくることは無いです。冷凍庫にアイス入ってますよ」

「はい。いただきますね」

……。

「それで、その時からヒーローを目指したと言うことですか?」

「あ、いえ違います。ヒーローを目指し始めたのは今年の夏ですね。子供を川から引き上げた高校生がいましたよね?」

「あー……なんかニュースでありましたね。もしかして」

「はい、チヤホヤされたいからです」

「せっかく良心から慰めのつもりでアイス出したのに!人の良心を踏みにじるのは正義のヒーローとして如何なものでは!?」

「悪人の良心という言葉が既に矛盾そのものなので踏みにじってるのは地面なのでは?」

「例え、空想の良心でも踏みにじるのはダメだと悪人さんは思いますね!!」

「いやーやっぱり笹乃葉さんは優しいですね!」

「うるせー!!!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る