八話目 麺類会話文

「素麺食べたい」

「そうめん?」

「あ、気にしないでくれ。今ちょっと素麺を食べたがる妖怪に取り憑かれたんだ」

「そう。祓ってあげようか?」

「どうやって?」

「そりゃ、青山君の頭に私の渾身の一撃を」

「それなら僕ごとあの世へバイバイだ」

「青山君くらいの頭の硬さなら別に平気やろ?」

「紅葉さんは自分の事を怪物かなにかと勘違いしてないかい?」

「まあ、いきなり妖怪に取り憑かれたとか言い出すやつを普通の人間として扱えるほどの教育は受けてないかな」

「あー……それは自分も受けてないかな。義務化されるといいね」

「そんなの義務化された日にはデモ起こすわ」

……。

「青山君はそうめんはどう食べるのが好きなん?」

「自分?あー……少し濃ゆい麺つゆに氷一つ浮かべて食べる至って普通の食べ方かな」

「あー涼し気で美味しいやつやな」

「紅葉さんはどう食べてるの?」

「んー私が好きというよりも妹からのオーダーなんだけども、冷製パスタみたいな感じでトマトとかの角切り野菜を乗せて食べたがるのよ」

「あーうん。何度か話したことはあるけど食生活は乙女って感じなんだね」

「それ妹の前で言わん方がええよ。みぞおちに一撃入るからな」

「何それめっちゃ怖いんですけど。てか姉妹揃って格闘家か何かですか?」

「誰が格闘家だ。格闘家ならむやみには拳振るわないわ」

「……組の者?」

「ハジキとドスのどっちがいいか選ばせてやる」

「御無礼致しました。エンコ詰めてお詫びさせていただきます!」

「そういうノリの良さだけは嫌いじゃないわ」

「それは好きって意味かい?」

「嫌いの反対は無関心って昔言った気がするけど?」

「あー……二時間ほど前かな?」

「なら、それでいい?」

「理解理解」

……。

「そろそろ昼ですね」

「そうね。素麺食べたくなったな」

「お、湯掻いてくれますか?」

「……それは青山君が人の家でエアコンの恩恵を受けていることを加味して言ってるのかな?」

「はっはっは。自分にそれほどにまで人を気にする気があるならきっと家主よりも涼しい場所に寝転んだりしてないさ」

「そう思うならさっさとそこを退いてもらおうか」

「嫌でござる!!拙者は!!!暑さに!!!弱いでござる!!!死んでしまうでござる!!!」

「退かぬなら、殺してしまおう、青山よ」

「サーセン」

「よし。いい子だ」

……。

……。

「飯行くかー」

「青山君の奢りなら着いて行くよ」

「自分より稼いでるやろ」

「ははは、支出がなー……ははは」

「あー……たまには奢ろうか」

「あざーす!まじ先輩の奢り嬉しいっす!」

「いや、同級生だし……同じクラスだし」

「そうだっけ?」

……。

「まあいいや。とりあえず飯行こう」

「どこ行くの?ファミレス?」

「うどん食べたい」

「よし、うどんだな。直ぐに行こう」


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