五話目 言葉には魔法と魂が宿る

「言葉っていうのは折り鶴なんですよ」

「三咲先生?飲み過ぎなら水を貰いますけど」

「毒にも薬にもならない。でも、精神に対しては影響を与えれる。そういう存在なんですよ……。国語の担当の風野先生なら分かりますよね!!」

「何を言ってるのかは何となくわかるが酔っ払いの対処は水を飲ませる以外知らないな」

「そーいうのは要らないの!!だからモテないんでしょ!?」

「え、なんで俺責められてるの?」

「はい、そこに座る。そして話を聞く!」

「え、はい」

「まあ、私が思うに言葉が何かを救ったり助けたり支えたりすることは非常に少ないと言えます!言えますよ!でも、何もしない訳では無い!そうですよね!」

「えーあーはい。まあ、僕も国語の教師ですから言葉の可能性というのはたまに生徒に説いていますよ」

「私は数学が好きで教師になった訳では無いのに……!!魔術とか呪術とかが好きなのに……!それなのに……!」

「あの……先生?」

「どーして誰も理解しれくれないんれすか!」

「ハイハイ、一旦水飲もうね」

「すみませーん!水を二杯お願いします!」

「はーい!かしこまりましたー!」

「ろうせ、せんせーもわらしの事バカにするんでしょう?知っれますよ」

「バカにしませんから恥ずかしいので机に突っ伏しながら指先で机を擦るのはやめてください」

「水お持ちしました」

「ありがとうございます。すみません、うるさいですよね」

「いえ、お気になさらず。ごゆっくりどうぞ」

「三咲先生?その様子なら何かあったんですよね?」

……。

「今日担当している生徒の一人に……魔術とかその歳になってまで……恥ずかしくないんですか?って言われましたよ」

「あーまあ、確かに先生もそろそろいい歳でしたね。流石に中学生相手にその話はキツイのでは?」

……。

「と言うより、僕はそんな話を聞かされるためにここまで来たんですか?」

「そんな話ってなんですか!あなたの大学の頃の可愛い後輩ちゃんが泣いてるんですよ!少しは慰めたり奢ったりしていいんじゃないですか!」

「それが目的で呼んだんですね」

「あらあらあら。バレてしまっては仕方ない」

「仕方ないじゃないですよ」

……。

「なんですか。曇りの無い目をして」

「いや、その目でこっちを見ないでください!」

「奢りませんからね!!奢りませんからね!!」

……。

「先輩はもうちょっと単純かつ単細胞になっていいと思いますよ」

「三咲先生はもうちょっとお淑やかさを身につけた方がいいですよ」

「そういえば今時間何時ですか?」

「今……?あー、あと二時間で日が変わりますね」

「なら、私はそろそろ帰らないとですね」

……。

……。

「……今日のところは僕が出しておきますので、そのうち返して下さいよ」

「先輩のそういう優しいところ嫌いじゃないですよ」

「調子のいい人だ」

「それじゃ、私は先に出てますね」

「ハイハイわかりましたよ。駅まで送れば良いんですよね?」

「その通ーり!」

「すみません!勘定お願いします!」

「はーい!」


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