四話目 男二人、膝枕

……。

「僕の顔には何かついてるのか?」

「いや、そういう訳じゃない。ただ、えらく疲れてるように見えるからね」

「あー……確かに最近は色々と振り回されることが多くて疲れてるのかもしれないな」

「……俺の膝でよけりゃあ貸してやらんこともないぞ?」

「……なら、お言葉に甘えて」

「いやいやいや!!!まてまてまて!お前は何言ってんだ?男同士だぞ!?」

「それで?」

「え……?マジで言ってるのか?」

「僕は疲れてて頭も回ってないんだ。硬いベンチに横たわって頭痛ーくなるより男友達のお前の膝を借りて寝た方がマシなんだよ」

「あー……うん。ほらよ」

「サンキュ」

……。

……。

……。

「神田?」

「どうした海司」

「その……姉さん達は元気にしてるのか?」

「ん?あー……上の姉は今帰ってきて昨日は晩酌に付き合わされたよ。下の姉は今は……熊本だったかな?で旅してるみたいだよ」

「そうなんだ」

……。

……。

……。

「俺の姉さん達の話とか急にどうした?」

「いや、ただそういえばと思い出しただけだ」

「そ、そうなんだね」

……。

……。

……。

「そういえば海司。あれ覚えてるか」

「あれってどれの話だ?」

「俺とお前で一緒に旅行した熊本旅行」

「あー……もう一年前か……。それで、なんで急にそんな話を?」

「無言の時間が苦しいから」

「コミュ障乙」

「膝を貸してる人間に対する態度じゃないな?」

「また、喫茶店でも言った時に奢ってやるから」

「あーさっきなんて言われたかわかんなくなっちまったなー」

「神田……お前わかりやすいな」

「俺たちは昔からこういう仲だったろ?」

「まあ、そうだな。いつだってそうだったな」

……。

……。

……。

「ところでさ神田」

「どうした金田川」

……。

「どうした金田川海司」

「いきなり苗字やフルネームで呼ぶ人が現れたから対処に困ってた」

「すまないすまない。それでどうしたんだ海司」

「いや、僕達って二年生なわけだろ?」

「あーそうだな」

「来年の今頃にはこうやって話してる時間もなくなるのかもしれないって思うとさ……なんかね」

「それは無いだろ。少なからず成績だけなら俺は常にトップだからな」

「いつも勉強付き合ってもらって助かってるよ」

「その成果がもう少し出てくれれば良いんだけどねー……。ねえ?」

「耳が遠くなって聞こえないなー」

「はいはい」

……。

……。

……。

……。

……。

「なあ、海司」

……。

「海司?」

……。

……。

「おい、ど阿呆。そろそろ昼休み終わるぞ。ほら、起きろ」

「ん、あ……悪い。今落ちてた」

「膝代、百六十円となります」

「放課後に売店寄ってくるわ」

……。

「てかあと何分で授業始まる?」

「え?あー……八分だな」

「俺の教室は屋上から遠いんだった!」

「お、ほら早く走れー」


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