偽装工作

「……よかろう。」


 彼が触れたのを確認する。このような他人が聞いている中であるにも関わらず、俺の提案を受け入れたことは少し意外だ。


「じゃあ質問するぞ。クラギス帝国には、邪神を討伐することが出来る魔道具、または人材が存在するのか?」


「……はい」


 魔道具が青く光った。なるほど……なら次の質問でどっちかがわかるな……。


「では次はお主の番だ……」


 俺の方へと転がってきた魔道具を片出で受け止める。


「ソウタは、火龍との間に、火龍の味方をする程の関係があるのか?」


 さて……ここでリスキーだが、偽装してみるか……まあ最悪、規則という盾を使ってしまえばいい。皇帝、お前の好きにはさせない。


 心の中で……

(『水魔法』!)


 俺のスキルで生み出す水は、生成するときのイメージによって性質が違う。

 

「……はい」


 魔道具は青く光った。


『!…………』


 これには、各国の代表達だけでなく、流石の皇帝も驚きを隠しきれなかったようだ……お前ら絶対あると思ってたろ……まあ……実際の所はあるんだけどな。


 すぐに石像のような顔に変わった皇帝は、俺の転がした魔道具に触れる。


「クラギス帝国には、邪神を討伐することが出来る魔道具が存在するのか?」


「…………はい」


 青く光る魔道具がそれを真実と認めた。次はあっちが質問する番だ。


「ソウタは、『氷属性魔法』と『水属性魔法』の両方または片方のスキルを所持しているのか?」


 『氷属性魔法』と『水属性魔法』か……俺の持ってるのは『水魔法』だけだよな……


 ん? ……そう言えば、俺のスキルって……『水属性魔法』じゃなくて『水魔法』だよな?


 あれ? そう言えば、学園長が言うには魔法って属性があったよな。俺のは……無い。でもそんなに違いがあるのか? ……ってあるか。詠唱してないし。いやでもそれは大賢者ジグラに間違ってるって言われたしな……。


「聞こえなかったのか? ならもう一度言うぞ? ソウタは、『氷属性魔法』と『水属性魔法』の両方または片方のスキルを所持しているのか?」


 あっやべ……さっきと同じ手になるが、ここは偽装するか……


(『水魔法』……)


「……はい」


 魔道具は青い光を放つ。さっきから毎回青く光っているが、誰一人その魔道具に欠陥があると言った者はいなかった。裏の権力の現れだろうか……


「残りは一つずつだな……邪神を討伐する事が出来る魔道具は、この城の中、この城の地下、この城の上空のどこかに存在するのか?」


「いいえ。」


 魔道具はまたしても青く光る。まあ、ここまで絞れた分だけいけたほうか……


「ソウタは、『鑑定』や『看破』など、情報を知ることの出来るスキルを持っておるのか?」


 ここで俺が『鑑定』を持っているのは知られたくないな……。


 スキルで3度目の偽装工作を行う。


「いいえ。」


 結局、俺の不正がバレる事はなかった。まあ規則には、「不正してはならない」なんて事は入れられてないがな。


 最悪「はいかいいえ」と答えておけばどうにかなるが、それはまた次回使わせてもらおう。

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