社会的殺人

「あ? アァァアァァァァァァァアァァァ!!! ブクブクブクブク………………」 


「勝……勝者、ソウタァァァァァァァァ!!!」

『オ、オオ…………』


 彼の元へ足を進める


──コスッ、コスッ、コスッ、コスッ──


「ねぇ勇者(笑)君、何でお漏らししてんのおぉぉお? 君の聖(性)剣は、そんなモノなのおおぉぉおお??????」


 高らかに言ってやった。あ~スッキリ!!


 俺は踵を返し、終了者待機ゾーンへと帰って行った。ああ、俺、今、どんな汚い笑顔を浮かべてるんだろうな……。




 ていうか、何で俺、こんなことして平気なんだ? ていうか、何でスッキリとか思ってんだ? 俺はやった事が正しい事だと思ってるのか? やってる事は日本では犯罪級なのにか?


 


────

──「お疲れ~……で、お前クソ勇者に何したんだ? あいつ股間押さえて泡吹いて失禁して気絶してたぞ? ……多分。」


「何って……勇者にか? やったことは単純だ。アソコの内部と外部に氷を生成しただけだ。尿路結石って知ってるか?」


──なんでこんなに淡々と語れるんだ?──


「尿路結石だろ? 知ってるぜ。諸説あるが人間が感じる痛みの中でも上位に君臨する、尿路に石みてぇな奴が出来て、それが内部を傷付けて……ってやつだろ? まさかお前、それの氷版をやったのか?」


──なんで俺あんなのやったんだろうな──


「そのまさかだ。まあ、ガチの結石は痛みが出るまでに時間を要するらしいけど、デカイ氷なら多分速攻だ。あいつの場合ドアを壊しかけた事以外は、俺が見た中で特に犯罪行為はやってない。だから俺が彼を殺すと、多分俺はその事をずっと引きずる。だから、社会的に死んでもらう事にした。『失禁勇者』という汚名付きでな。まあ『失禁』といっても外部の氷が溶けてジワるだけなんだがな。」


──自分は、まだ大丈夫だと言い聞かせる。引きずれる人間だと無理矢理納得させる──


「うわ、そりゃあやり過ぎじゃねぇか? 」


──俺もそう思う。思ってしまっている──


「それくらいが丁度いい。それにこれは結構『やさしめ』にしたほうだ。氷だから内部のも外部のも、いずれ溶けて水になって流れるし、損傷は強い薬を飲めば多分一発で治る。尿路結石って中の石を取り除けば、炎症とかが無い限り、特別な治療とかはしないらしいからな。まあ、ネットで調べた奴だから少しアレだが……効果は十分にあっただろう。」


──自分は『やさしめ』にしたと、自分が情けを掛けられるまだマシな人間であると──


「お前顔がスマイル過ぎて逆に怖いぜ……。お前、中身意外とクレイジーな奴なのか?」


──多分そうなんだろうな。だけど……──


「はは、俺がクレイジーかどうかは、俺じゃなくて周りが決める事だ。さて……そろそろ閉会式が始まるか?」


──自分でクレイジーだと認めたくない──


「まあ、予定ではそろそろ始まる事になってるがよ……まだ長引きそうだ……誰かさんのせいでな。おっと、誰とは言ってないぜ?」


──もう切り替えよう。いつもの自分へ──

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