学園長

「急に来てすまない。ガゼン、君に急用があって来た。あと、ドバンの町のギルドマスターのガレアスから、手紙を預かっている。」


「…………学園にダンジョン……ですか?」


 目の前の老人は、手紙を読んで目をパチクリさせた。


「そうだ。ここにダンジョンを引っ越して、ダンジョン実習を行う……というのはどうだろうか?」


「うーん……確かに、卒業生の中には冒険者としてダンジョンに潜る人も多くいますが、それは、命を懸ける覚悟があってこそです。まだ大人でない学生達にそのような命を懸ける所業をさせるのは、いかがなものかと思いますが。」


「それについては問題ない。ダンジョン内の設定で、外部者の死と部位欠損を無かったことに出来る。そうだろ? ダイチ。」


「はい。俺のスキル『ダンジョンマスター』を使えば、ここにダンジョンを引っ越して、ダンジョン内での外部者の死と部位欠損を無かったことにするように設定が出来ます。」


「知っております。この手紙に書いてありましたから。私が言いたいのは、それを学生に強制するべきではないという事です。」


「では、ダンジョン実習という形ではなく、『自主的に魔物と戦うための訓練場』として運用するというのはどうかな? 将来魔物と戦う事になる卒業生もいるはずだからね。」


「………………わかりました。その方向で検討いたします。つきましてはダイチ様にこの学園にしばらくの間滞在して頂きたいのですが、大丈夫ですか?」


 二人でダイチに視線を向ける。


「俺は大丈夫です。」


「それはよかった。ところで、後ろのご老人ばどちら様でしょうか?」


「わしはジグラというものじゃ。大賢者とも呼ばれておる。」


 学園長は固まった。そりゃそうなるわな。だって大賢者だよ?


────

──学園に入ったときは三人だったのに、出てきたのはわずかに一名。そう、俺である。


 ダイチはしばらくの間ここに滞在する事が決まったから許せるが、ジグラ、お前だけは許さねぇ。


 学園長にべた褒めされてご機嫌状態になった彼は、


『わし、ちょっと生徒達にわしの魔法を見せに行くから、小僧は先に行ってていいぞ!』


と言い残して学園長と共に去っていったのだ。


 これが『生徒達に指導してくる!』とか『魔法とは何たるかを語ってくる!』とかだったら、俺はまだ許せたかもしれない。


 生徒達に新しい学びを与えてくれる、特別講師みたいな感じでね……………………


 ただ、『わしの魔法を見せに行く!』ってお前がただ単に自慢したいだけだろボケェ!

もう一回殺っても大丈夫かな?


 俺には手紙を渡すというお仕事がある。俺はこめかみを抑えながらギルドへ向かった。

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