二度目
「何で付いて来るんだ?」
「別に、ただ単に付いていきたいだけじゃぞ。それに、わしが協力してやったら一瞬で王都に着けるぞ。小僧たちにとっては得しかないじゃろう?」
「片道最低二週間の王都に一瞬で着くとか、どうせ嘘なんだろ?」
「本当じゃ。嘘ではないぞ。わしの魔道具を使えば一瞬で着くのじゃからな!」
めちゃくちゃ自信満々に言い放つ大賢者。悪い話ではなさそうだが、この爺さんも付いてくるのはなぁ。
「ダイチ。お前はどうしたい? この何してくるかわからん爺さんと一緒に王都まで一瞬で行きたいか? それとも俺達二人と安全な御者さん、又は俺達二人だけで、二週間くらいかけて王都まで行くか?」
こんなときには第三者の力を借りるべきだ。さあダイチよ、後者を選ぶのだ。
「おいソウタ。わしをそんな風に言うのはひどくないかの? もうちょっと良い言い方があったんじゃないかと思うぞ。」
「『どちらが強いかはっきりさせよう』みたいな感じでいきなり宣戦布告してきて、馬鹿みたいな威力の魔法をぶっぱなしてくる爺さんに、そんなこと言われたくないぞ。」
「いや…………それはの? あれじゃ、挨拶というやつじゃ!」
あ?
「みえみえの嘘吐くんじゃねぇ! それに、自分の安全保険だけしっかりかけといて、俺の安全保険は全然かけてなかったろ!」
「五月蝿いのじゃ! わしは悪くないのじゃ! 小僧がそんなにレベルが高いのがいけないんじゃ!」
「逆ギレしてんじゃねぇ!」
そのとき、
「おい……黙れや二人とも。」
まるでダンジョンの底から響いてくるような、冷たくて低い声が、俺達の鼓膜と体を震わせた。
────
──結局、俺とダイチと大賢者の三人で行く事になった。何でガレアスさんがあの爺さんの肩を持ったんだ?
「では、転移の魔道具を使うための準備をするから、二人は互いに近付いて手を繋ぐのじゃ。」
指示通りにすると、彼は俺達二人に近付いて、レジャーシートみたいな物体をポケットから出して(ポケットに入るサイズじゃねぇだろ!)、それを俺達三人に被せた。
「これから詠唱をするからこれの外に出るんじゃないぞ。『繋げ、抜かせ、着かせ』。」
────
──「もう出ても良いぞ。」
本当に着いたのか?
シートの外に出ると、そこには広大な草原が広がっていた。建物は無い。あれ? ……
「やっぱり着いてねぇじゃねぇか!」
と怒りをあらわにして振り返ると、数ヵ月前に俺が見た、巨大な壁に包まれた王都があった。
「着いてたのかよ!」
俺の叫びが草を震わせたような気がした。
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