「なるほどな……では、本題に移ろう。俺はこのダンジョンを攻略……つまりダンジョンコアの破壊又は撤去を行いに来た。」


 ダイチは、ビクンと大きく震えた。呼吸が荒くなっているのが、離れていてもわかる。


「ダ、ダンジョンコアの破壊だけはやめて貰えませんか!? 俺はダンジョンコアが壊されたら、死んでしまうんです!」


 語気がさっきより格段に強くなっている。

まあそうなるか。死にたくないもんな。俺だって、同郷の人間を殺したくはない。


「わかった。そっちの方向で検討する。そのために、ダンジョンコアを町に持って帰ろうと思うから、付いてこい。……ああ、安心しろ。道中は俺がお前を守ってやるから。後、顔上げろ。俺には土下座に対する免疫がないからな。」


「ありがとうございます!」


 顔は丸型か……そしておそらく男。


「そういえば、気になった事があるんだが、聞いてもいいか? ああ、もうため口で良いぞ。」


「…………いいぜ。何だ?」


「お前、さっきとは別キャラだな…………まあいい。いつ、ここに転移してきたんだ?」


「うーん、大体二ヶ月くらい前だな。」


「なるほど……もう一つ質問がある。俺が来るまで、君はどうやって生きていたんだ?」


 ここは魔の森だ。そして彼のステータスでは、ここにいる魔物たちにはおそらく勝てない。ならば、水や食料はどうやって調達していたんだ?


「ああ、それはポイントを使って、チュートリアルダンジョンにあった回復の泉? みたいなやつを生成して、それを飲んで何とか生きていたのさ。」


 俺を真っ直ぐ見つめて、


「はっきり言って、お前が来てくれなかったら、俺はずっとここに居続けて、いずれ死んでいただろうな。ここから連れ出してくれて、ありがとう。」


 魔の森で一人ぼっち、しかもこのままだと死ぬという状況……かなりギリギリだったんだな。雑巾の恨みは、またいつか返そう。


────

──「この男が、例のダンジョンマスターなのか?」


「そうだ。彼も俺と同じ異世界人だ。」


「はじめまして。俺は穴熊大地という。」


「君か。とりあえずこの球に触れてくれ……何故あんな場所にダンジョンを生成したんだ?」


「それには色々と事情があってな…………」


────

──「なるほどな。そういうことか。嘘ではない事はわかっている。なあソウタ。どうする?」


「俺はコアの破壊はあまりおすすめしない。コアはもう撤去して、ここに持ってきているから、あとはこれをどこに引っ越させるか、なんだが………………」


 考えた結果、一つの案に行き着いた。


「なあダイチ。王立魔法学園に、ダンジョンを引っ越さないか?」

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