王都へ
──あれから大体一ヶ月がたった。
俺とガレアスさんに特別な関係があると思われたのかは知らないが、幾つかのパーティーに誘われた。が、全部断った。
自分の限界さえ知らず、味方を巻き込むかもしれないのだから、パーティーなんぞ組んではいけない。あっちに迷惑がかかる。
そして、スキル名をいちいち口か心で言わずとも、スキルを完璧に使えるようになった。いやぁこれは嬉しい。あれはぶっちゃけ面倒くさかったからな。
その日も簡単な依頼をこなし、ギルドへ戻ると、
「ソウタ様ですね、ギルドマスターがお呼びです。私について来てください。」
ガレアスさん、帰ってきたのか。
────
──「久しぶりだ。悪かったな、急に呼び出して。」
「問題ない。それで、結果はどうだったんだ?」
彼は目を閉じて深呼吸した。これは、流れ的にばらしちゃったパターンか?
「俺にとっては嬉しいんだが、君にとっては残念かもしれない知らせだ。……ソウタ、国より君に勲章並びに褒章が与えられることになった。国王陛下との謁見付きでな。よって君は明日から王都に向けて、出発する必要がある。」
「勲章と褒章は何となく予想してたが、国王陛下との謁見まであるのか…………そして、明日出発って急すぎないか!?」
「安心しろ。馬車は個人用のを既に手配してあるし、謁見の礼法は向こうで教えてもらえる。」
「そういう問題じゃない!」
声を荒げた俺に彼は真剣な顔で答えた。
「落ち着け。まず、謁見自体は三週間後なんだが、ここはベテルス王国の、最東部に位置する町ドバンだ。いくら王都が国の中央にあるとはいえ、片道に二週間はかかる。」
「それなら一週間もあるんだし、明日出発する必要は無いだろ。」
「話を最後まで聞け。そして、向こうについてから手続きをしなければならないから、いくら三週間後とはいえ、明日から出発しないと間に合わない可能性がある。そして相手はこの国の王様だ。謁見を遅らせたとなれば、最悪俺の首が跳ぶ。」
「事情はわかった。でも俺、多分だけど馬より速いぞ?」
「それで万一、間に合わなかったら俺の首が跳ぶかもしれないんだ。もし馬車で早く着いたら、観光でもやってればいい。頼む。」
ガレアスさんが頭を下げた。うーん、ここまでされたらなぁ。
「……わかった。明日出発する。明日のいつ、どこから馬車に乗ればいい?」
すると、彼は安堵の表情を浮かべた。
「朝の八時に、冒険者ギルドの前にある馬車に乗ってくれ。王都で手続きをするときは、冒険者ギルドの職員に冒険者証を見せればいい。」
「了解。また、長い別れになりそうだ。」
その後、俺は携帯食料を買い込んで、宿で浅い眠りについた。
────
──翌日、『ドバンの寝床』を出ると、隣の建物の前に馬車が停まっていた。その脇には背丈が馬と変わらぬほどの、銀髪の大男がいる。
「来たか。じゃあ、行ってこい。せいぜい楽しんでこいよ。」
ガレアスさんとも、ドバンの町とも、一ヶ月も会えなくなるのか。寂しいな。だが、今すべき返事は、それではない。
「勿論、楽しんでくるさ。」
俺は馬車に乗り込み、携帯食料でパンパンになった布袋を横に置いた。
前方でパシッと音が鳴った。視線を馬車の外に向けると、視界に映るものが、横に動いていく。彼の姿は、すぐに見えなくなった。
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