-59- 「田中家の掟」
田中君の家に遊びに行った時、一つの約束事を聞かされた。
「俺ん家は、窓とか玄関とか勝手口は良いけど、家の中の扉とか、襖とか、押入れとかは、全部閉めちゃダメなんだ。必ず、少し開けといてくれ」
理由を聞くと、試したら分かる、と言われた。
家に遊びに行って、田中君の部屋に通された時、試しに襖を全部閉め切ってみた。
閉めても何も起きなかったので、そのまま田中君の部屋でゲームをして遊び始めた。
しばらくして、ふと襖の方を見てみると、いつの間にか少しだけ開いていた。
田中君が僕の視線に気付き、
「ああ襖がちょっとだけ開いてるだろ。この襖だけじゃなくて、この家の扉や襖は、全部閉めると、いつの間にか少しだけ勝手に開いてるんだよ」
と言った。
「この家は昔からこうなんだ。どうせ開くんだから、全部閉めずに、最初から少しだけ開けておくんだ。それがうちの掟なんだ」
田中君の説明を聞きながら、僕は襖の隙間を見ていた。
田中君には、見えているのか、いないのか。
隙間からは、ぎょろりとした目でこちらを覗く、年寄りの様な顔が見えた。
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