-44- 「霧について」

「水鏡君。分かっているとは思うけれど、霧が濃い日は絶対に出歩いてはダメよ。霧と言うモノは、とても異界に繋がり易いんだから。霧の中でおかしな場所に迷い込む話は、世界中にいくらでもあるわ」


 これは、公園でお姉さんから教わった、色々な事の内の一つ。


「霧が濃い日は、町中が異界の入り口になっていると言っても過言じゃない。霧の日に出歩いたら、異界に迷い込むかも知れないし、異界から出て来た妙なモノに出会ってしまうかもしれない」


 その日以来「霧の日は家から出ちゃダメよ」と、天気予報で霧が出そうになる度、何度もお姉さんに言われたものだ。


 けれど、家から出ない事も、必ずしも安全とは言えないんじゃないだろうか。


 ある家は、前日まで普通に建っていたのに、次の日の明け方に霧が出たと思ったら、霧が晴れたら一軒家が跡形もなく消えていて、空き地になっていた。


 住んでいた家族も、全員行方が知れない。

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