ちょっと休憩 頼朝は慎重勇者?
ぶっちゃけ
「なぜ頼朝は義経を殺さなければならなかったか」
というのが、この歴史破壊小説『ダブルダブル』のテーマだ。(言っちゃったよ)
大前提として、二人はじつは仲が良くて、頼朝は義経を殺したくなんかなかったという設定で物語を進めている。
これ、べつに私(作者)だけのオリジナルではない。古いレジェンドだとけっこうある設定だ。歌舞伎とかわりとそう。昔の人は、優しいと思う。
で、だったらどうして? という話になるわけだ。
頼朝の本当の気もちなんて、いまとなってはもうわからないから、そこは物語作者の腕、ようするに妄想力の見せ所になる。「しかたなく」というが何がどう「しかたなかった」のか。
ありがちなのは
「義経の人気を妬んだ」
「義経の人気で、御家人たちが分裂するのを恐れた」
というやつだが、作者がその説をとってない理由は単純だ。
ダサい。
そんなへその穴をほじるような兄弟げんかにつきあわされた何十万何百万という人間たちこそ、いい迷惑じゃないか。
とはいえ、さすがに義経追討が
「まるっと狂言」
だったというのは無理があるだろう、という読者諸君のお声が聞こえてくる。うん、自分でもそう思う。言っちゃったよ。
だけどこれ、いちおうかーなーりー考えて練りあげたストーリーだ。
頼朝と義経がおたがいをどう思っていたか、なんてことは記録に残っていない。残っているのは
「頼朝は、義経追討という名目で、全国に守護地頭を設置した」
という記録だ。
つまり
「頼朝は、義経を危険人物指定した」
という事実だ。
そして
「守護地頭の設置が、鎌倉幕府の基礎を作った」
という事実だ。
ご存じのとおり、義経が討ち取られた後も、この体制は続く。
後白河院や朝廷が「ねえ、もう戦争終わったよ?」とおずおず言ってくるのを頼朝がガン無視しつづけたのもまた史実だ。
何か、見えてきませんか。
義経が危険人物指定されたことは、少なくとも、鎌倉幕府にとって好都合だったのだ。
いや、むしろ――
必要だったのだ。
これって、「義経は人気を妬まれた説」なんかより、はるかに残酷じゃないだろうか。
この設定、もちろん、作者が一人で思いついたわけではない。
日本史の知識ほぼゼロから始めちゃったものだから必死に本を読みあさってたら、少しずつ積み重なるように固まってきた。
だって――そもそも、幕府とは何かって話だ。
もとは〈陣中〉という意味だ。つまり〈臨時の軍事政権〉だ。
戦争が終わったら解体されるべきものだ。
それを解体しないで、なんとなーく定着させるというのが、源頼朝という男が一生をかけてやりとげた仕事だ。前にも書いたけどようするに
「武士の、武士による、武士のためのお仕事創出プロジェクト」
だったんである。
そのためには。〈臨時の軍事政権〉をずーっと続けるためには。
〈非常事態宣言〉出っぱなし、という条件が、必要だったのだ。
こういう話をしているとすごく鬱になってくる。良くない。
この小説はあくまでラリラリ路線で行くつもりなので、ここで一発楽しいやつを投入してこのページをしめくくろうと思う。
作者はアニメの『慎重勇者』――
フルタイトル:この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる
を見て熱狂しちゃったのだが(笑)、とくに大好きなシーンの一つが始まってすぐのあれだ。
チート級のスキルを持つ勇者、竜宮院聖哉。新米女神リスタルテに召喚され、救済難度S級レベルの世界「ゲアブランデ」を救済に向かう。
しかしこの勇者、もんのすごく、めちゃくそ、アホか?ってなくらい慎重すぎて、スライム一匹相手に攻撃魔法アトミックファイアーを連射しつづけ、灰になっても完全滅却するまでやめない。
そばで見ているリスタルテちゃんがはらはらして、というか、いいかげんうんざりして、
ちっちゃな声でおずおず、もじもじ、
「ねー、もう、やめようよー。スライム死んでるよ?」
って言うところで私はツボった。可愛すぎる。Amazonプライムで観たとき爆笑が止まらなくて、何度も停止してリプレイして観た。
この聖哉くんを頼朝、リスタちゃんを後白河院、スライムを義経に置き換えたのが、
何を隠そう(隠してない)、『ダブルダブル』の世界観だ。
そのうち
「ねー、もう、やめようよー。義経死んでるよ?」
とおずおず言ってる後白河院をガン無視して、灰になってる義経めがけてなおもアトミックファイアーを連射しつづける頼朝をお目にかけることになると思う。
それが奥州合戦だ。
乞うご期待。(言っちゃったよ!)
竜宮院聖哉がスライムを完全滅却せずにいられない理由は、もちろんネタバレだからここには書かない。
その理由が、われらが頼朝ちゃんことカミーユの理由と同じなのかも、ネタバレだからいまは書かない。
歴史上の頼朝の理由と同じだったかは――
天のみぞ知る、だ。
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