第5話 前任者はいずこ?

「オ…オホホホ!」

自分でも意味不明だとは思ったが 高笑いなどしてみた。

この方法で全員の名前を確認するとか無理としか思えなかったから…。


本当にこのままイライザお嬢様として生きていくとして あまりにも情報が無さすぎる。


「時給分の仕事はしてね?」

などと言われたけれども…。

難しいよ!?



大体 世の中は派遣社員に対して要求が多すぎる。

私はたまたまExcelが好きだから マクロは組めるけど他のソフトに関してはそれほど得意でもない。派遣会社にはスキルを申告してあるのに…。


そう あれは町工場?みたいな会社さんのお仕事1日め。

「遠藤さん、ではホームページ作ってもらっていい?」

「は?」 

カップヌードルにお湯いれてもらってもいい?みたいな軽い感じで何を?

「うちって小さい会社だからホームページ外注とか費用がね!派遣社員さんはオールマイティーだって聞いてたから本当に助かるよ~」

「あの、私はWeb系は」

「資料はここに!PDFとかよくわからないから現物だけど」

え?そこから?

「あ~楽しみだな~時間はかかってかまわないからカッコいいのお願いね!」

いやいや カッコいいの前にホームページ作ったことないから!

しかし、断れる空気ではなく…。

仕方なく、ネットで作り方を検索したりしながら、なんとかホームページを作り上げた。

一週間で!

ずぶの素人なのに結構すごくない? これはスキル追加かなっていい気になっていたら、何も知らない友達に「千冬の会社のホームページださい」って言われて…。

悪気はないとわかってても、結構傷ついたわ…。


「あの、イライザさま? どうなされたのでしょうか」


みんな困惑した様子でわたしを見てる。どうしよう、絶体絶命のピンチ。


「あ、あの…ええと」

いままで、派遣先のどんな無理にもなんとか対応してきたけど、さすがに今回は厳しいかも。

背中をいやな汗が流れる。

なんか目がまわってきたかも…。


「イライザお嬢さま、大丈夫ですか? やはり今日はお休みになられたほうがよかったのでは」

ふわっと肩に手がおかれ、耳元で甘く低い声が響いた。

え、と思い振り返ると、意地悪な執事が真後ろにいて、私の背中を支えていた。

「あら、イライザさま、お加減が悪かったのですか?」

「大丈夫ですか?」


それをきいたお嬢さま方が口々に労りの言葉をくれる。

「あ、あの」

「…茶色い髪にピンクのリボンがエリザベス、金髪に緑の瞳がキャンディス」

こそっと執事が耳元でささやいた。






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