第3話 契約期間はエンドレス?
「遠藤さん、きちんとお約束どおりのお仕事してくださいよ?」
執事にしては若い。むしろ執事喫茶にならピッタリ(行ったことないけど)
かもしれない短い金髪を七三に分けてモノクルをかけたニヤニヤ笑いの男。
千冬!こいつあの怪しい派遣会社のコーディネーターじゃない!
「ちょっとアナタ!この状況は」
スターん!
固いものが首にヒットする。
「はうっ…」
目の前が真っ白になるって本当のことなのね。
かまくらの中かなってくらい、前がまっしろよ。
ていうか、お嬢様の首筋に手刀って…パワハラ…。虐待…。
ふう、と気が抜ける。
「お嬢様はめまいでお倒れです。はやく治療してさしあげねば」
もっともらしいこと言ってるけど、本当に介抱する気あるの?
あやしい。あやしいからにげたいけど、気がどんどん遠くなって…。
私はずだ袋のように運ばれながらあのときのことを思い出していた…。
ラブホテル街のど真ん中、スマホの案内がなかったら絶対たどり着けなかった。指でついたら倒れちゃうんじゃないの、っていう古いビル。クモの巣とかはってて、おばけもいそう。怪しさMAXの派遣会社だった。
ワールドワイドエキセントリックJ
それが派遣会社の名前。
「JはジョブのJですよ」
俳優になれそうな、やたらときれいな顔した営業さん。しかも男性。珍しい。ていうか、ほとんどいないわ。
時給は破格の1800円…。
この会社で本当に1800円だせるのかしら。
怪しい…。
くるんじゃなかったという気持ちとこんな事で怯んじゃダメたという気持ちと戦う。どうしても長期で雇用してほしい。前回は3年使ってくれるといっていたのに あれやこれや我慢して契約以外の仕事もして 社員さんとも仲良くしていたのに あっさりと契約修了された。ごめんね~、僕は君を押したんだけど上がね、もっと若い子がいいって。方針が変わっちゃったんだよね、と上司がへらへらしながら言った。わたしだってそんなに歳いってないのに、おじさんたちの目には年増にうつるわけね! ううん、いいわ。恨まない、恨まないけど呪うよね。
ほんとは休みきれなかった有給を引き継ぎたかったし派遣会社は変えたくなかった。だが、エントリーしてもエントリーしてもおとされたら温厚な千冬だってキレるよ!
「こちらのお仕事であれば即日ご紹介可能です。顔見せも必要ありません」
「素敵…」
「時給は1800円 残業はありますが9時5時の仕事です。すぐそこですよ?」
「通勤も便利なんですね!」
「一応職場見学していきますか?」
「はい是非!」
職場見学に目がくらんだ私は営業さんの手をつかんだ。
あ…れ…急にめまいが…
私は気を失う真似はしても本当に気を失うことはなかったのに…
遠くなる意識の中で声がした。
「そうそう…契約期間はエンドレスですよ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます