第2話 お客様の中にお嬢様はいらっしゃいますか?
「イライザお嬢様!しっかりなさってくださいまし!そしていつものように 私どもを嘲ってくださいまし!」
メイド服姿の女性が この世の終わりでも来たみたいな形相で私に向かって両手を合わせる。
嘲ってくれってなにいってるの? 大丈夫?
ていうか、メイド姿?
なんで?
そこで 私はこの場の違和感に今更ながら気づいた。
ロココ調というのだろうか、使いやすさを度外視して豪華さだけに振り切った部屋。広すぎて 始業前に掃除しろ!なんていわれたらめまいがしちゃう…。
ううん、無理よ、絶対無理!
だって、わたし、掃除なんて大嫌いだもん。
掃除は契約に入ってなかったはずよ。
あとコスプレも。
制服あるなんてきいてない気がするし、100歩ゆずって制服ありでも、メイド服とかダメでしょ。
いままで、私はどんなにヘンテコな職場でも初回契約期間は頑張って働いてきた。
それが私の派遣社員としてのポリシーだったのだけれど ついに破る日がきたのだろうか…。時給1800円…。
「イライザ!」
今度は誰!?
声のした方をみると、なんだかとてもきらびやかな人がそこにいた。
誰? 新しい上司?
きれいな顔…だけど、こんな上司いやだわ。
髪の毛、くるんくるんだし、服にはレースがひらひら。
そりゃ、個人の好みがあるのはわかってるし、認めるけど…逆に私にも好みがあるわ。
やっぱりやめよう。
いや、でも…。
別にカレシじゃないんだし、上司が好みじゃないからって関係なくない?
「イライザ、何をぶつぶついってるんだ? しっかりしなさい!」
さっきからイライザって誰のことよ。
私は千冬だってば。
そう返そうとしたとき、ふと窓に自分の姿がうつったのが見えた。
誰?
そこには、髪の毛がくるんくるんで(どんだけ巻いたの?)、青い目の、ウエストが驚くほど細い少女がいた。
胸元には大きなリボンがついた豪華なドレス。
いったい何メートルの布を使ったのかしら。
わたしは、思わずガラスにむかって手を伸ばした。
そして、髪にも。
髪を引っ張る。くるんと巻かれた金糸がまっすぐのびる。
ガラスにうつった少女の髪も同じようにのびる。
てか、あれってわたし?
青? 金髪?
髪の毛染めた覚えないし、カラコンとか入れたことない。
あと、自慢じゃないけど、わたし
寸胴なのよ。
「やだ、すごい華奢体型」
どんなにダイエットしても手に入れられなかった憧れの華奢体型が目の前に!
これって、コスプレ効果なの?
さっきまでの戸惑いはきえ、わたしはきゃっきゃっとはしゃぐ。
多分上司は、そんなわたしを見てオロオロしはじめた。
いけないワタシったら初日からテンション高過ぎ!
千冬落ち着いて!
だけど、なぜか止まらない!
何故 私は高笑いしてるの?
まるで…悪役令嬢みたい…。
「お嬢様…お戯れはその辺で。旦那様がお困りですよ?」
私をたしなめるように 背中側から肩を捕まえる若い男性。
執事っぽいコスプレしてるけど…この人…!
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