彼女たちの想い~サクノ編~(ネタバレ、解釈違い注意)
どうもこんにちは、くしやきです。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
ついに四人目、サクノ編です。
だから何だということも特にないので書いていきましょう。
【サクノ】
しいの幼馴染、コトリとは高校で出会い、ノゾミとは大学で付き合い始めた。
しいの親友として登場し、しいとノゾミの関係を知りながらもその事実を秘めていました。
彼女にとってしいはなによりも大切な親友であり、その親友という関係に亀裂を入れたくなかったことが主な理由です。
幼少期にしいと出会い、どうしようもないくらいの寂しさを埋めてくれたしいという存在に依存的な感情を抱いています。しいに『ずっと友達でいよう』といわれたことを強く受け止め、生涯をしいの親友であることを望んでいます。
第一作『彼女の恋人はうちのベッドで寝てる』第二作『親友を脅して好きにしようと思う』第三作『好きな人の好きな人をとってみた』では一貫して、しいの親友にしてノゾミの恋人、そしてその裏切りを知らない無垢な少女として描かれています。
実際のところ第一作時点で彼女はしいとノゾミの不貞行為を認知しており、コトリがそこに加わったことも早い段階で察していましたが、彼女は自らを白々しく装い無垢な少女を演じています。
彼女にとって重要なのはしいの親友でいることでした。
彼女は日々親友という体裁をどうやったら保てるのかと考えており、ノゾミからの告白を受け入れたのもその一環といえます。恋バナやグチなんていかにも親密そう、というのが主な動機です。彼女に、ノゾミに対する愛情などというものは終始これっぽっちもありませんでした。
第四作『親友と恋人がセックスしてるのをわたしだけが知らない』では、ついに暴露を決意するしいを強引に無視して知らないふりを続けます。
しいが与えた歯型をノゾミに嬉しそうに見せつけられ、彼女はショックを受けます。やはり自分はあまりうまく恋人をできていなかったのだというショックです。
しかし裏切り自体は知っていた彼女は、ノゾミを脅して不貞の証を見なかったことにします。そのさいに平然とおぞましい所業を行ったことは彼女のかつての孤独にもつながることでした。彼女にとって、自分の望み以外はわりとどうでもいいことです。
また彼女は、自分の一番大切なものであるしいに触れたノゾミに強く嫉妬しています。ほかの理由をつけてしかたないと自己を正当化することは、白々しくも自分に嘘をつくことは、彼女の得意分野でした。
“なにもしらない”を継続する彼女のもとにしいがやってきます。すべてが終わったつもりでいるしいに、自分がなにもしらないことを言葉にせずに伝えてしいとの親友関係を続けようとしました。どうじに、すべてを失う覚悟でいたしいがそんな愚かな行為を取らないようにと彼女を慰めます。
しいがそうして弱音を見せられる相手は、皮肉なことに、裏切っている彼女だけです。
しいが打ち明けることで親友という関係が失われると分かっている彼女は、しいが絶対に打ち明けられないようにしたいとそう思いました。そこには、独占欲も含まれていました。
ある日彼女はしいとコトリでお泊り会をします。
ノゾミとの間がすでに冷え切っていることの詳細をふたりには黙って、まるでいつもどおりの生活が続いているかのようにふるまいます。ノゾミにこれ見よがしに刻まれる痕にももちろん気づいていますが、それも見ないふりです。
そのおかげもあって、彼女はしいと親友が続けられていると感じていました。
彼女は、けれど、その親友関係がこのまま続くことを疑っていました。
知らないでいることにはいつか限界がきて、このままだと親友であるしいを失ってしまうだろうと彼女には思えてなりません。ですが親友として、なにもしらない無垢な彼女にできることはこのままなにも知らないでいることだけでした。
しかし彼女は、その夜、どうしても気になって、しいとコトリの情事を盗み聞きます。
彼女自身は気が付いていませんが、親友であり続ける不安と、ノゾミやコトリがしいに触れていることへの嫉妬がそこにはありました。親友であり続けることを望むのと同時に、彼女はしいを欲していました。
彼女の心に堕ちた一滴は、なにもしらないままにしいと親友でいようという決意をあっさりと塗りつぶしていきます。
しいの言葉に従って親友でい続けるというのが、彼女の本来の願いでないことを彼女はとっくに理解していました。
しいを欲する彼女の意思は、しいと親友であるという決意と混ざり合って、彼女の精神を歪ませます。
夢に見たしいとの出会い、しいからのお友達宣言に、彼女はなんと答えたのでしょうか。
すくなくともそれは、彼女にとっては思い出したくもないようなものでした。
しいが決意を固めて彼女のもとを訪れます。
親友である彼女は、しいの強い決意を受け止めてあげるべきなのだと思います。
しかし、欲望を自覚した彼女にはそれが許容できません。
彼女はしいの告白を強引にごまかします。
そして苦痛に苛まれるしいを誘惑しました。
裏切りを続け、どこにも吐き出せる場所のないしいにとって、なにも知らない彼女は唯一弱音を吐き出せる場所だと、彼女は理解していました。親友としてそんな彼女を慰めてあげることはとうぜんのことだと彼女は自分に言い聞かせます。それこそが親友という特別な立ち位置でした。
彼女はしいに抱かれました。
第五作『彼女が腕の中にいる間だけ息ができる』では、彼女はついにしいの告白を受けます。
しいの鬱屈を受け止めることは彼女にとってどこまでも幸福なことでした。彼女が気兼ねなくそれをぶつけられるのは、親友である自分だけなのだと思えました。間違いなく自分がしいを独占できているという実感が彼女にはありました。
だから彼女は、二度目により激しくしいから求められたときも、それを当然受け入れました。しいがなりふり構わず貪るように吐き出す様は愛おしく、もっともっととはしたなくねだる様さえ彼女に晒しました。そうすることで傷つくしいがもっと告白できなくなるはずだと思うと彼女は安心します。
しかし彼女の予想とは裏腹に、しいは彼女に打ち明けようとします。
彼女はそれを許容できません。しかししいの決意は、ちょっとやそっとで止まるようなものではないように思いました。
だから彼女は、強硬策に出ました。
彼女は、自分がなにも知らないを装っていることをしいに知られたくないと思っていました。しいが望む無垢な自分でいたいと思ったからです。しかしここまできてしまえば、そんなことをいってはいられませんでした。
彼女はしいに全てを打ち明け、それを逆手にとってすべてを見ないふりすることを提案します。
彼女はしいが彼女を失うことを恐れてくれると確信していました。そして実際に、しいは彼女の提案を承諾しました。
そうしてしいと彼女は永遠の親友になりました。
もう二度と、それが失われる未来はあり得ません。なぜなら、心配ごとはもうないのですから。
彼女はしいと幸福な親友でい続けました。
今作でたったひとり、すべてを手にしたのが彼女でした。
しいの身と心という、コトリやサクノが手に入れることのできないものを独占した彼女は今作における唯一の勝者です。
しいの心はすこし壊れてしまっていたかもしれませんが、彼女にはどうでもいいことでした。
親友であるしいとより親密になれた以上の結果などありません。彼女だけがハッピーエンドでした。
彼女の感情にはほとんど揺らぎがありません。
親友であるしいになにも知らないと平然と嘘をつきながら、傷つく彼女を慰める行為はあべこべです。恋人と親友が寝ていることを知りながらその親友に恋愛相談をするという状態は常軌を逸しています。
ともすればほかのキャラクターに薄れがちですが、冷静に見れば、すべてを知りながらあそこまでなにも知らない人間の動きができる彼女は今作で最も壊れたキャラクターだと言えます。ほかの子たちが抱えている悩みやなんかを、彼女はほとんど抱えません。まっさらです。まっしろです。おぞましいまでに白く白々しい。それが彼女でした。
なげえ(最後)。
というわけでサクノ編でした。
本当は本当になにも知らない子という予定だったんですけれど、いや普通気づくよな、と思ってしまって、じゃあなんで気づかないの?→気づいてるから無視できるんやでという流れでサイコキャラになりました。ごめん……なんかほんとごめん……。
本当はもっと過去を掘り下げたかったなとか、色々と思うところのある子でした。
これは本当に高校生IFやるか……?
題名は『とろとろ百合シリーズ』かな。
やべえ書きてえ。公募向けに書いてるものまだ仕上がってないのに!ないのにっ!
頑張ります。
さておき。
なんだかんだとサクノについても書いてみたところで、四人分が終わりました。
これにてひとまず完結ということになるのでしょうか。なるんでしょうね。
もしかしたらまたあとがきとか報告とか次回作の予告とかをひょこっと乗っけたりする可能性はありますが、いったん完結ということにしておきます。
なんだかんだ長かったですね。
あとがきまで含めると小説一冊分くらいでしょうか。あれ?あんまりながくないような……。
まあいいや。
このままぐだぐだと書き連ねるのもなんだかなあという感じなので、これにてお開きとします。
ここまでお付き合いくださった物好きな方がいらっしゃるかは分かりませんが、もしよろしければお好きなカプとか僕は私はこう思った!みたいなことを感想にぶちまけていただけるともしかしたらとろとろ百合に反映されるかもしれません。目下のところ全員ちゃんとしあわせなハーレムルートまたはマルチエンディングを考え中。早く次の百合が書きたいんじゃー!
それでは皆様、こんな拙い文章に最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
今度はもっと素敵な百合を皆様の手元にお届けできるように邁進してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
くしやき。
彼女が腕の中にいる間だけ息ができる くしやき @skewers
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます