彼女たちの想い~ノゾミ編~(ネタバレ、解釈違い注意)

どうもこんにちは、くしやきです。

という訳でノゾミ編です。

ここまでお読みいただいている方がどれほどいらっしゃるでしょうか。

すこし疑問ですが、僕がやりたいのでじゃんじゃん続けていきます。

相変わらず解釈違い注意です。苛立つ前にブラウザバックです。


【ノゾミ】

今作における悪者、として最初は生まれた子でした。

しいに大学で一目ぼれし、サクノの恋人になって、コトリとは顔見知り。

しいを脅して彼女に抱かれながら眠るのが日課となっている状況から物語は始まります。


本来はもっと悪女みたいな設定で、それを嫌いながらもどこか魅了されていくしい、みたいな流れを想定していたのですが、いつの間にか彼女は幼気な少女になっていました。ぶんしょうってふしぎー。


第一作『彼女の恋人はうちのベッドでねてる』では、わがままで無邪気な悪魔みたいな女として描かれています。

基本的には一貫して、第三作『好きな人の好きな人をとってみた』で描かれているように、しいに恋愛感情を抱きながらもそれをどうすれば伝えることができるのか分からず、しいを脅したり悪戯を仕掛けたりして、なりふり構わずにその視線を独占しようとしています。


彼女については、作中で語られていない(そして多分、語るべきだった)彼女の履歴から追ってみます。


しいに恋をする以前の彼女にも、好きになった人が何人かいました。そのつど彼女は好きな人を脅してベッドを侵略して、やがて飽きて捨てるというようなことをしてきたようです。

しかしながら彼女の言う『好き』というのは、しいに向けるような恋愛感情ではなく、どちらかというと自分に好意を向けない相手を自分の思うがままにしたいという倒錯した欲求だったように思います。

彼女がベッドを侵略するだけで肉体的行為に及ばないのは、彼女の幼稚さもありますが、そのような関係を欠片も望んでいなかったからです。


今回しいに恋をした彼女は、しいに抱かれることを冷たくて痛いと表現しています。

冷たいのはしいで、痛いのは自分です。

今までと違って本当に恋をしてしまった彼女は、けれど、それが他と違うことを理解していません。だからこれまでと同じような支配を望んで、しいからどんな感情であれ視線を向けられることを望みました。彼女は、いつもならなんとも思わないはずのそれを、冷たく感じます。


本当は彼女はしいに愛されたいと望んでいます。だからしいに冷たい視線を向けられると、ひどく胸が痛みます。好きな人に嫌われることは苦痛です。ですが彼女はそれ以外に方法を知りません。むしろ、好きな人に好きになってもらえることをひどい贅沢だと、わがままだとさえ捉えています。

過去になにかトラウマとなるようなものがあったのか、それとも今まで一度たりとも成功することないそれを単に恐れているのか。いずれにせよ、彼女は、しいに好かれたいという本心と、しいに感情を向けられているだけで満足だという虚勢の板挟みで苦痛を感じています。

いつしか彼女は、しいの傍にいると苦しくて眠れないようになってしまいます。


第三作においては、そんな彼女が、しいに愛されるサクノという存在への嫉妬から自分の本心を自覚し、しいに好きになってもらいたいと願います。彼女の感じたサクノの甘さというのは、サクノの優しさのようなものでした。しいを傷つけることしかしていない自分には到底あり得ないものだと彼女は感じています。

そんな自分がたまらなく苦痛で、彼女はサクノの持つその甘さを欲します。しいを傷つける自分ではいたくないと願うのです。

そうすれば、しいが自分を愛してくれるのだと思いたかった。

目を向けられるだけではなく、しいに見つめてもらいたかった。


その願望は、彼女の夢に表出します。

しいの目が自分の全身を見つめる夢。けれどそれは、彼女にとってどこまでも夢でした。


彼女は、しいの愛を感じることができません。どうしても自分が甘くなることはできません。だからせめて、彼女はしいの傍でまた前のように眠りたいと思います。

だからそのために、彼女は数日間一睡もせず、ふらふらの状態でしいの元を訪れました。


それだけを幸せと思い込むことで、自分を好きにならないしいをそれでも好きでい続けました。


彼女はしいに歯形を送られます。その意図を全て察したわけではありません。しかし彼女は、そのとき、確かにしいの愛情を感じました。それは今の状況で感じることのありえないはずのものでした。だから彼女は、なにかが終わるのだと、そう理解しました。

安らかな愛の中、彼女は眠ることができました。


第四作『親友と恋人がセックスしてるのをわたしだけが知らない』では、彼女は全てをサクノに打ち明けることに、失敗します。他ならないサクノの手によって。代償として痛みを刻まれながら。

その後の彼女はほとんど作中では描かれていません。しかしサクノを恐れた彼女は、よりしいに傾倒していくことになります。彼女はしいに跡を刻むことを求めました。そうすることで、しいのものであるのは自分なのだとそう思えました。しいが未だに愛を向けるあの恐ろしいサクノではなく、自分こそがしいに愛されているのだとそう思いたかったのです。


第五作『彼女が腕の中にいる間だけ息ができる』でも彼女はしいに跡を求めています。そうすることで彼女はしいに愛されている実感を得ました。

しかし、それは永遠には続きません。いつからか、しいはまた冷たくて痛い存在になります。その分だけ熱烈に痕を刻んでもらっても、時には取り返しのつかない痕を刻んでもらっても、彼女は満たされません。

サクノが傍にいるから行けないのだと思って彼女と別れても、それは変わりません。

彼女はしいの愛を欲しがり泣きました。

彼女は、しいに捨てられました。


彼女はしばらく部屋で泣き続けました。

いつしかしいが部屋に戻ってくることを信じました。

食べ物も取らず、飲み物も取らず、飢えて、渇いても、待ちました。


彼女はそれで終わりました。


彼女はとても不器用で、恋というものを知らなくて、だからこの地獄のような愛憎劇の撃鉄を上げることになりました。

もっと早くに出会っていたのなら、そんなIFストーリーを描いてみるのも素敵なのかもしれません。彼女が今より少しだけまともだったころに、彼女の愛を理解できるしいに出会えていたのなら、もっと幸せな結末になっていたのかもしれません。


そんなことを考えていると、どろどろ百合(高校生編)が書きたくなってきました。

しいとサクノとコトリのいる高校に、ノゾミが転校してくるというIFストーリーです。

淡く、青々しい彼女たちであれば、きっと最後にはハッピーエンドになるような気がします。というかデウスエクスマキナを降臨させてでもそうします。なにが悲しくて娘たちの不幸が見たいのか。

これ書きながら泣きそうでしたもん。


なげえ(定型文)。

まあそんなこんなです。はい。


こんな駄文をお読みいただきありがとうございました。

次回はサクノ編です。終わりになるのか、あとがきみたいなのが続くかは不明ですが、よろしければお付き合いください。


以上です。


くしやき。










―――ああそれと。

一応書いておきますが。


最後のは、彼女です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る