彼女たちの想い~コトリ編~(ネタバレ、解釈違い注意)

どうもこんにちは、くしやきです。

あいさつの言葉をどうしようと悩みましたが、ある意味これも続きものなのでまあいいかと思いました。

前回の予告通りコトリ編です。

相変わらず解釈違いとかあると思うので、肌に合わねえと思ったらブラウザバックです。


【コトリ】

第二作『親友を脅して好きにしようと思う』の視点人物。

しいとサクノとは高校で出会って、ノゾミとは大学生になってから顔見知りになった。

しいとサクノの親友としてふたりを見守るような立ち位置として物語は始まっています。しいがサクノに片想いしていたことを知っていて、それを応援していました。自分の中にあるしいへの気持ちは押し隠して。


それなのにサクノがノゾミと付き合って、失恋したしいが唯一のすがる場所として彼女の元を訪れた際に、彼女は過ちを犯します。自分の気持ちを押さえられず、傷心のしいに口づけをしました。そのことが楔となって、失恋後のしいに対しても自分の気持ちを示すことができないような状態でした。


第一作『彼女の恋人はうちのベッドで寝てる』においては、先述の通りの見守るような立ち位置として描かれています。

しいへの想いと、傷ついたしいに勝手に自分の想いをぶつけてしまった後悔の板挟みで苛まれながら、しいとサクノの親友として相談に乗る頼れる人物でした。


第二作『親友を脅して好きにしようと思う』においては、かろうじて親友と言い聞かせていたしいの弱みを見つけてしまい、タガが外れた獣のごとく描かれています。

彼女にとってしいは、とても潔癖な存在でした。眠る唇を奪いながら親友面をしている自分がひどく醜く見えていた反動です。

それなのにしいがサクノを裏切りノゾミと寝ているという事実を知ってしまいます。しいが、自分と同じように汚れた存在だと思いました。一種神聖視さえしていたものが自分と同じ高さまで堕ちてきたことで、彼女は我慢ができなくなりました。彼女は親友を抱きました。


彼女は行為だけでなく、しいを言葉でも汚そうとします。しいが汚れれば汚れるだけ自分のものになるのだと彼女は思っていました。

しかし実際は、しいの気持ちはなおもサクノに向いています。それが狂おしいほどに憎らしく感じます。汚れて汚れてどうしようもなくなってほしいと思いました。

同時に、彼女のなかではしいは愛する親友であり、その気持ちに嘘はありませんでした。だから汚れていくしいを見て、それを汚す自分に、深く絶望しました。

しいがそんな汚れを隠していてくれればいつまでも親友でいられたのにと、彼女は思いました。


彼女の望みはしいを自分のものにすることでした。だから作中で彼女はしいの汚れを強調し、しいが自分と同じようなひどく醜い存在なのだと主張します。彼女の美しいという言葉は、しいが穢れていくという実感を示す言葉でした。たとえしいがサクノへの感情を失わないとしても、しいを独占出来ないとしても、しいの汚れを堪能できるのは自分だけというその状況を愛していました。


彼女の中には相反するような感情があります。

しいを汚して自分のものにしたいという感情と、しいに綺麗のままでいて欲しかったという感情です。しかし一度しいを抱くことの心地よさを知った彼女はもうずぶずぶと沼に沈んでいくことしかできません。自然と、後者の欲求は内に秘められます。

それなのに、彼女はしいを独占しようとするノゾミを見てつい口を滑らせます。こんな汚してしまいたくはなかった。元々は、本当にしいを愛していた。恋人になりたかった。そんな思いがあふれ出します。

その途端に彼女は自分がとてもおぞましいことをしていたのだと気が付きました。これ以上しいを汚したくないのだと思いました。


そんな彼女にしいは告げます。自分をこれからも汚してほしいのだと。そうでなければ、彼女の握る弱みに意味をなくしてしまうのだと。

しいを愛することを思い出してしまった彼女に、それを拒むことはできませんでした。

もうとっくに親友でなくなってしまった彼女を繋ぎとめるには、それに従うしかありませんでした。


第三作『好きな人の好きな人をとってみた』では、しいに纏わりつく気持ち悪いものとして冒頭でのみ描かれています。

幼気なまでにしいを好いているらしいノゾミを知って、彼女は悔しかったのかもしれません。


第四作『親友と恋人がセックスしてるのをわたしだけが知らない』では、サクノと仲のいい親友として描かれています。

自分としいとの関係や、しいとノゾミの関係をなにも知らないサクノを哀れに思いながらしいを抱きます。彼女にとって、サクノが親友であるという気持ちは本物でした。

この時点でしいがサクノに全てをばらしてしまいたいのだという破滅的な欲求を抱いていることを知って、彼女自身も全てを失ってしまうつもりで激しくします。

それなのにサクノはやはり何にも気が付いた様子はなく、結局彼女はサクノの親友でい続けることになりました。それは同時に、しいとの地獄のような関係が継続していくことを意味していました。この時の彼女はきっとすべてに絶望しきっていて、どこかなげやりにそれを受け入れました。


第五作『彼女が腕の中にいる間だけ息ができる』では、彼女はしいにとって都合のいい相手として描かれています。

彼女はしいに弱みを握られている立場であり、幾度となくしいを汚していました。

けれどある時にしいは、抱かれている最中に自分以外の名を呼び始めました。それは彼女にとってはあまりにも苦痛でした。この関係を続けることが地獄でしかないのだと思い知らされるような感覚でした。だから彼女はそのいら立ちをしいにぶつけます。

しかししいはそれをどこまでも拒絶しました。彼女に都合のいい存在であることを強要しました。それだけを彼女は望んでいました。それをどうしようもなく理解した彼女は、同時にしいがもう元の愛していた存在ではないのだと思いました。


彼女の中に、しいへの愛はもうありませんでした。

目の前にあるのは、自分にぐちゃぐちゃに犯されることを求める魅力的な女でした。それがどこまでも扇情的に自分を求めました。だからしいは、その欲求に応えるようにしいを抱きました。独占欲も愛情も何もありません。そんなものがなくとも、その肉をいくらでも味わえるのだと理解していました。彼女はもう壊れていました。


そして最後の場面です。ここに語るべき想いはありません。そんなものを抱く余裕さえもう彼女にはありません。


特に理由はありませんでした。ただ、唐突に切れました。

しいを熱狂させたのは彼女の舌先でした。しいに快楽を与えるのは彼女の指でした。

それだけあればしいには十分だと思いました。だから彼女はそれを残して飛び出しました。


これで彼女はお終いです。


たった一歩の間違いで、彼女は流れるようにすべてを失いました。

彼女がしいを脅した時点で、遅かれ早かれ彼女は崩壊していたのでしょう。そう思います。

全編を通して、彼女を醜悪に描いたつもりです。肉欲を貪る獣のように描いたつもりです。

けれど、最も常識的であったのは彼女だと思います。そのつもりです。


あまり読者の皆様に好かれるような子に描けなかったと思います。それはなんだか彼女にとても申し訳なく思います。

だからいつか、彼女のどきどき青春編みたいなIFストーリーを描いてみたいものです。

彼女だけでなく、しいと関わったみんなの幸せを、IFだとしても、描いてみたいものです。

彼女のことを考えているうちに、強くそう思うようになりました。


なげえ(短い)。

比較的短くなりましたね。よかった。まあしいが最長なのは明らかでしたが。

登場人物の中で最悪のバッドエンドかもしれないコトリですが、僕の中では特にお気に入りだったりします。あんなエンドにしたくなかった……安易なことしかできない僕のせいですね。


愚痴はさておき次回はノゾミ編です。

また興味があればよろしくお願いいたします。


以上です。


くしやき。

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