第3話 施設 中の上巻

3話 施設 中

 当時、私たちの時代は、県が主催する夏休みの思い出づくりの一環という事で、色々な体験ツアーや体験合宿的なものが、県主催で格安で沖縄や、県施設などで様々な学校の子供たちが体験学習をし、夏の思い出を作る、という名目で様々な募集がされていた。

 私の近所は、小学3年生からこういったものに応募ができ、倍率はかなり高いが当選する人が多く、小4の時には沖縄の学習にご近所で3名も当選したという事で、話題となり、正直私も羨ましいと思っていた。

 すると、小学校5年生の夏、何を思ったのかそう言ったものへ頼み込んでも、他所は他所、家はうちだと言うのが口癖のような親が、なぜか去年訪れたとある施設の2泊3日の冒険学習に応募していたようで、それに当選したから行って来なさいなと言い出した。

 内心、なんで?という疑問はあったものの、それよりも去年行った施設での思い出が楽しかったこともあり、私は何の疑いも持たず行くことを決めた。

 この時、辞めとけばよかったと後々公開する事になるとも知らずに。



 8月だというのに当日は清々しい青空と程よい風が吹いており、夏も終わりが近いのかもしれないと感じさせる空気が流れていた。

 私は親に送り届けられ、去年課外学習で訪れていたできて間もない施設の坂の下に来ていた。

 荷物を下ろし、珍しく上機嫌の父に手伝ってもらい荷物を下ろす。

 忘れ物が無い事を確認し、後は自分でいけるよという事で、父は私を置いて車に乗り込み、3日後にここでと言い去って行った。

 その時気がつくべきだった。

 父がちらりと私の後ろ左手を凝視していることに。

 ちょっとの間を置き、父は車を走らせ居なくなる。

 私はなんとなしの違和感はあったが、気にすることなく山の中腹にたっている施設へと、すでに何人か集まっていたのか、すぐに施設の人が私に気がつき、私の元に駆け寄ってくる。

「今日の合宿の子かな? お名前は?」

 私は名前を伝え、それを聞いた施設の人は満面の笑顔で。

「ようこそ、今日から3日間よろしくね」

 そう言って今日の青空にも似た笑顔を向けてきた。

 それと同時に、スケジュール表のしおりを渡され、何時に何をするなどの記載が細かく書かれてたしおりに目を通すように言われる。

 どうやら、予め何をするかなどは施設側の人が決めているらしく、その中には、化石堀やテント設営などと言う記載もあった。

 どうやら、ちょっとした化石なんかが近くの沢で取れるらしく、それも歴史や文化を学べるという事で、今回の学習に入っている。

 さらに、お昼はどうやら自分たちでカレーなどを作るとの記載もあった。

 面倒だなぁという思いはあったが、それはそれでキャンプっぽいなぁという思いがあったので、素直に喜んでいた。

 ほどなくして参加者全員が集まったのか、班決めが始まる、施設の人に呼ばれた順番に集まり、班が出来上がっていく。

 私も呼ばれ、5人組の班が出来上がり、早速その班でカレーを作る事となる、私は普段から自宅で両親の帰りが遅い事もあり自炊を良くしていた。

 それもありカレーは何度となく作っていたため、手早く野菜を切り始めた。

 あまりに普通に始めるので他の4人は戸惑いながらも、何したらいいかという話が出てきたので、私は自然と、それぞれに分担を決め、皆それに従い、動き始めた。

 ほどなくして無事にカレーが出来上がり、私は安どのため息とともにできた喜びをかみしめていた。

その結果なのか何なのか、私がどういうわけかこの第5班の班長となってしまった。

まぁ、子供なんて短銃で、リーダーというものに誰しもが憧れたり、誇らしく思ったりするものだ、それが小学生ともなれば喜んで引き受けるだろう。

 私もその例にもれず嬉しそうに、皆の提案を素直に受け取り、班長を引き受けた。

 その後も合宿は順調に続き、夜の寝床、1日目はキャンプの設営だったため、昼食終了後からキャンプ道具を渡され、5人で荷物を運びながら設営する場所を探すこととなったのだが、意外な言葉が施設の人から飛び出す。

「みんな、道具は全班に行きわたったかな?」

 みなが口々に、はーい、と返事を返す。

「では、皆に今日設営してもらうのはここだ!」 

 そう支持された先は、あろう事か施設左の山林だった。

 みな一様に、え?!という顔をし、なんでそこなんだという心境だった。

「皆の言いたいことは分かる。だが、この合宿はあくまでも自然と触れ合い、身近に感じるのがメインだ。なので、森の中でテントの設営をしてもらい、そこで1夜を明かすのはかけがえのない経験になるだろう!」

 今にして思うが、こいつは何を言ってるんだ。普通に危険だろ。と大人になれば普通に出てくる言葉だが、当時子供だった私たちはそれもそうかと納得してしまった。

 当時は1990年代も後半だが、まだまだ体育会系のノリや、根性論が強く根付いてた時代で、そういう考えがどちらかといえば一般的で、子供は少し危険な目にあっても、大人のいう事は絶対守りましょう。的な風潮があった。

 皆一様に、一抹の不安を抱えながらも、各班ごとに森に入っていく中、背中に施設の人の一言が飛んできた。

「全員、ちゃんと各班と距離を取るように。決して近くなりすぎず、適度に離れる様に」

 言わんとしていることは分かるが、おおよそ入り口とは言いにくいところから森へ入る皆の顔色には不安の色が強く出ていた。

 それもそうだろう、なにせ、入り口から暗いのだ。

 もちろん外は晴れている、晴れているのだが、木々が多いせいなのか、はたまた、長年放置されていたのが原因なのか。

 ともかく昼間だというのに、入り口だというのに妙に暗く感じていた。

 それは私だけではなく、どうやらどの班も全員が、うわぁ、とか、暗くねぇ?などと口々にしながら足を踏み入れていた。

 私はそれ以前に、気持ち悪いと感じていた。

 この時、全力で止めるべきだったと、すぐに思い知らされることになるとは夢にも思わずに。

 

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とある街道の、シャレにならない話。 藤咲 みつき @mituki735

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