Episode1:とりあえず、最初は──
それから五年が経った。その間に忍術をとことん鍛え、魔物相手に実践を重ねた。最初は慣れなかったけど、やっていくうちに心の動揺を抑えることができるようになった。
「──初陣どうしよう……」
友達も弟子も取ってないし、つてもない。やはり、初陣はかっこ良く決めたい。
「……よし、学園でいいや」
多分、闇の組織的なものがあるに違いない。ああいう、組織的なところには裏組織はあるんだわ。姉が今通っている学園でいいや。学園は五年制なので、姉は来年卒業だったはず。
「そうと決まれば──準備して行かなきゃっ。まずは諜報ね、諜報」
そして、意気揚々と準備に取りかかった。
◇◆◇◆◇
目的の学園が見えてきた。まるで、王宮のような豪奢な建物で、恐らく内装も凝っているだろう。というか、姉、よくこの学園通えたね。うち、一般家庭だし、そんなにお金持ちじゃないはずなのに。……ああ、そういえば、前にお母さんが言ってた気がする。姉はとくたいせーだから、授業料とかも免除で安く済む……みたいな感じだったかな?
「警備も厳重体制……」
まあ、ぶっちゃけ問題ない。こういうのは想定済みだからね。気配を消すのは朝飯前よ。
警備員達に見つからないように気配を消すと……
パキッ!
「…………?」
「…………?」
警備員達は辺りを見回す。しかし、何も見当たらず、少し困惑気味。
……びびったー……。なんでこんなところに小枝があるのよ! ……これは罠ね。流石なんとか学園。罠は巧妙ってわけね。
私の超一流の気配の消し方のお陰で難を免れた。しかし、巧妙な罠に気を配らなければならなくなった。厄介なことこの上ない。
暴れそうになる心臓をどうにか抑え、学園の柵の前人気立つ。中々に高い柵だ。しかし────
「──《すり抜け》」
潜入するのに必要だろうと思った魔法がここで役に立った。《すり抜け》、それは、すり抜けることが不可能な隙間に遭遇した際に柵の向こう側とこちら側を繋ぐ──いわば短距離ワープである。途中、これ、《すり抜け》じゃないんじゃ──とか思ったが、そんなのは些細なこと。
「定番は天井裏よね」
とりあえず天井裏で聞き耳立てとけば闇の組織の会話くらい聞き取れるはず。
私は、そのまま足音を立てずに走ると、学園の裏口を探す。果たしてそれは──見つからなかった。やばいなぁ……無計画で来ただけに裏口がないなど想定外。
「……よし、《すり抜け》」
なので、誰もいない空き教室にすり抜けることにした。……魔法でこの黒装束維持するのも大変だわ。秘密裏に服を発注できるところが欲しい。
魔法で黒装束の姿を維持するのは、常に
「こんな昼間っから闇の組織暗躍してるかな……?」
まあ、してなかったらしてなかったで、夜に改めて行けばいいだけだし。
私は排気口を開けると、そこに入ろうとするが────
「うわ、埃っぽい!」
埃が舞った。うーん……仕方ない。掃除しよう。忍者直々に掃除とか、感謝して欲しいわね。
「《
光属性魔法、《
「よし、早速入ろう」
私はジャンプして排気口に入る。中は狭いし暗いが、問題ない。
魔力の流れを掴んでいるので、視界不明瞭でもバッチリ物体の位置も把握できる。
「ふむ……どっち……?」
まあ、しらみ潰しに行けば大丈夫でしょう。とりあえず、左に曲がることにした。すると、徐々に話し声が聞こえ始めてきた。
「……《聴力強化》」
「来週の学武祭、楽しみだよねー」
「今年の優勝は間違いなくあの方だろうな」
「そうだねー……」
「いや、わからないぞ、あの方も強いからなぁ……」
──あの方って誰。言い方からして、お偉いさん……。私から見れば全員お偉いさんなのだが。恐らく、この学園、貴族も通っているだろう。
「……姉、いじめられてないかな」
姉の事だし、友人くらいいると思うけど……サブミッションとして追加しておこう。姉の観察。
「それにしても……がくぶさい……か」
恐らく何かの催しだろう。──事件の匂いがする。
私は口角をつり上げた。──不敵な笑み、きちんとつくれてるかな……。
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