第54話

「どうなってる! なんだ! あの走りは?!」

 興田は満川と作業班に向かって、叫んだ。

「解りません!! でも、このままだと負けます!!」

 一番年配の作業服の男は、部下の元へ向かって、ノウハウのプログラムを強化するための手順を述べだした。

「興田くん!! 何が起きているんだ!!」

 角竹も真っ青な道助の手を赤くなるほど両手で握って、興田に向かって叫んだ。

「解りません!! でも、なんとかします!!」

「相手を殺すんだ!!」

 道助は満川に向かって、叫ぶ。

 周囲の離れた観客たちの耳にその言葉が入り、真っ青になった顔をした者たちが現れた。


 遠山は6周目に差し掛かった。

 相手のペンズオイルニスモ GT-Rも同じく6周目だ。


 遠山がコーナーに派手に突入した。

 ペンズオイルニスモ GT-Rもスローイン・ファストアウト。

「ヒール・アンド・トゥー!! ヒール・アンド・トゥー!! フルスロットル!! 上級ドリフトもこなすし!! 敵は蹴散らし……便所――――!! 便所――――!!」

 遠山は便意を紛らわせるために叫んでいた。

 コントロールラインはもうすぐだ。


「あっーと、遠山選手ゴーーール!!」

 竹友はマイクを握りしめ、絶叫した。

「Aチームの勝ちです!! 再び奈々川首相の勝利でーーーす!!」

 応援席の観客たちはA区。B区。そして、C区の歓声が瞬く間に満たしていった。






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