第5話
テレビを消して、僕は会社へと出勤する。
黄色のスポーツカーは、昨日の夜にこの寒さの中でマルカが洗車をしてくれていた。秋も深まるこの季節に、アンジェたちは眠らないし寒さを感じないから特注で揃えた甲斐があった。
僕は駐車場でランボルギーニにイグニッションキーを差した。一段回すとメインスイッチが入り、カーナビなどの電子機器が目を覚ました。更に回すとスターターモーターが回転した。
スポーツカーは回転数は早く落ちる。7000回転すると、その次はガクンと落ちる。
僕はランボルギーニの短い咆哮を聞くと、雹と大雨の中を快適に走り出した。
矢多辺コーポレーションまで、車で約25分だ。これまで遅刻したこともないし、欠勤した時もない。調子が悪い時もないし、病気もしない。
人は僕のことを機械というけれど、違うんだ。僕は神なのだ。
そう経済の神なのだ。
車で走行中に携帯が鳴った。
2050年からB区は、事故さえ起きなければ運転中の携帯電話の使用が許可されていた。けれども、現奈々川首相(晴美さん)が危ないからと禁止した。
僕は軽く舌打ちをして、近くのコインパーキングに車を停車して携帯にでた。私用電話は緊急時しか鳴らないようにしていた。
相手は原田だった。
「雷蔵さん。スリー・C・バックアップのデータを10億で買えと、坂本 洋子が言ってきました」
坂本 洋子とは日本屈指のハッカーで、その道の人たちからは九尾の狐と言われている。
「10億なら安い。いいよ。買ってください」
僕は二つ返事で答えて、携帯を切った。
コインパーキングに大雨や雹の中、手を伸ばして携帯電話を差し込んで車を走らせた。
今では携帯電話はB区には現金がないので必需品だった。銀行の機能が付いていた。利息もあって、融資や募金もできる。つまり、銀行や金融機関は携帯の数字だけを管理する管理会社となったのだ。後、各店のポイントカードなどにも対応されていて、お得なデビットカードのようなところがある様々な面に有効な身分証明書であった。
霜も降りないクリスタルの両開き自動ドアが開くと、そのまま液晶のワイドスクリーンが目立ち。会社の宣伝をしている地下へと入った。矢多辺コーポレーションは外部の人でも車でしか入る人がいない。
駐車場に正面玄関が広大な地下30階に一つずつある。
B区では車の免許を持っていない人はいない。
全体の40パーセントを占めるお年寄りや子供たち、あるいは障害のある人たちは、バスや電車などの乗り物以外では大きな建物の中には入れない。病院もそう。大きな建物の中に入るには救急車かバスや電車などの乗り物だけだ。
そういう。……歩道がないわけじゃないけど……。車両優先の構造を道路全体に施工されてあった。余談だが、大部分を都市開発プロジェクトでノウハウが建設し、滅多に交通事故が起きない世界になった。
地下26階に僕の車がおける駐車スペースが三つある。通路のゲートキーパーに挨拶をして、受付に手続きしてもらったら、車を駐車し。そこから少しだけ歩いて正面玄関から会社へと入った。
玄関から右に向かって歩くと、正面に社員用の高速エレベーターが10基ある広いホール。エレベーター内は60名が乗れる仕様だ。正面には受付と左側には自動販売機の列がある。
13名の重鎮とアンドロイドのノウハウが3体。いつもの時間に、急いでエレベーター内に入ってきた。
「雷蔵さん。おはようございます!」
「雷蔵様。おはようございます」
「おはようございます!!!」
社員の声に軽く会釈して、
僕はエレベーターに乗って、136階のボタンを押した。
「雷蔵さん。今日はおはよう」
河守がエレベーター内の壁に寄り掛かり、いつもの挨拶をしてきた。
僕はニッコリと会釈をすると、秘書のノウハウから資料を渡された。
ノウハウは全て甘いマスクと鋼鉄製の体にガリ痩せの腹部をしている。身長175センチのアンドロイドで、一体38万円で買える安価だが高性能な機械だ。
その資料を注視していると、
「ねえ、スリー・C・バックアップって、一体幾らくらいするの? お金持ちの雷蔵さん」
冷やかした表情の河守が僕の顔を覗いてニッと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます