第7話
他の誰にも打ち明けられない事もあって、相談の相手ははるおみに限定されていた。
はるおみは家から少し離れた大学に通っていて一人暮らしをしていたので、相談はもっぱら電話だった。
「話聞いてるだけなら相思相愛じゃない。何が不満なのさ?」
「だって、もう2ヶ月になるのに、まだパパに何にも言ってくれないんだもの。」
私はついつい愚痴ってしまう。
「それは仕方がないんじゃない?二人はまゆが生まれる前からの付き合いだろ。」
「それはそうだけど…」
「弟みたいに思ってたやつにかわいい娘を取られるおじさんの気持ち、考えてみなよ。」
そう言われると、ぐうの音も出ない。
「誰にも言えないって分かっててそういう関係になったんでしょう。」
「そうだけど…」
「まゆは僕にグチれるけど、かずきさんは一人で葛藤してると思うな。」
「そうなんだけど…」
「そう言う訳だから、まゆももうちょっと辛抱して、かずきさんの事、あんまり困らせないで待ってあげなよ。」
「でも、いつまでもコソコソしてるのは嫌なの。別に悪い事してる訳でもないのに。」
いつまでも不満を漏らす私にはるおみが
「まゆ、かずきさん振り向かせるのに何年かかった?」
「えーっと、10年?12年?よく覚えてないな。」
「そんなに待てたんだから、今更2ヶ月くらいでやきもきしないの。」
軽く笑いながらからかうように言った。
「それに、かずきさんは自分の気持ち自覚してまだ2ヶ月って事だろう。あんまり慌てさせないの。追いかけすぎると逃げられちゃうよ。」
「それは困る。もうかずき君のいない生活なんて考えられないもん。」
「じゃあ、まゆが少し大人になってあげないとね。」
「…そうね。もう少し待ってみる。」
「まあ、かずきさんがいつまでも煮え切らない態度なら、その時はまた言ってよ。色々考えておくからさ。」
「色々って何?」
「だから考えておくって。じゃあね。」
相変わらず、言いたい事を言うとはるおみの電話はぷつりと切れた。
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